伴走

奥多摩の山道70km以上のコースを24時間以内に走り抜く過酷な山岳耐久レース「長谷川恒男CUP」。腕試し……ではなくて足試しのつもりでエントリーしていたのですが、その案内状がついに事務局から送られてきました。

今回は初参加なので途中でリタイアしてもいいや、くらいの気軽な応募だったのですが、こうして案内状が送られてくればやはり完走したくなってくるのが人情で、そこに書かれた注意書きにもじっくり目を通します。事前に健康診断を受けろとか途中棄権した場合は極力保温に努めろとか路肩は崩れやすいから気をつけろとか、さすが厳しいレースだけに注意も微細にわたっていますが、その一番最後に次の注意が書かれているのを見つけて目が点になりました。

犬の伴走というのはわからないでもない(実際そういうケースが過去にあったらしい)のですが、猫の伴走とは?

しばらく考え込んではたと思い当たったのが、法学の最初の方で学習する条文解釈に関する技法の解説です。法律や規程、契約などの条文を読むとき、その条文があらゆる場面を想定して詳細に書き込まれており、したがって文字通りに受け止めればよい、ということはもちろんないわけで、条文は大なり小なり抽象化された表現で記述されていますから、それを実態にあてはめようとすると「解釈」という作業を必要とすることになります。この解釈の技法にはさまざまなものがあり、場面に応じて使い分けられます。

  • 拡張解釈:規定の文言を普通より拡げて解釈する。
  • 縮小解釈:規定の文言を普通より狭めて解釈する。
  • 反対解釈:規定している場合以外にはその規定の結果と反対の効果が生じると解釈する。
  • 類推解釈:規定がない場合に類似の場合の規定をその事項にあてはまるように解釈する。
  • 勿論解釈:直接規定されていない事項をその規程の趣旨からみて当然規定されていると解釈する。

そこで、この案内に単に「犬の伴走は禁止します」と書かれていたとすると……

  • 拡張解釈:イヌ科の他の動物(キツネなど)に伴走させてもダメ。
  • 縮小解釈:犬ではあっても他のランナーに迷惑をかけない介助犬はOK。
  • 反対解釈:犬としか書いていないのだから猫はOK。
  • 類推解釈:「愛玩動物」という意味で性質が共通するから猫もダメ。
  • 勿論解釈:この禁止はスムーズで安全な走行を確保する趣旨なのでバイクもダメ。

などと悩んだあげく大会事務局に「この注意書きはどう解釈するんだ!」と問い合わせるヒマ人がいないとも限らないと見越して、「犬猫等」と極めて包括的な表現を使ったのではないでしょうか。

……んなわけはないか。しかし、そもそも一番ありそうな「人間の伴走」を禁止しているようには読めないのが、この注意書きの最大の弱点かもしれません。