愛聴

温故知新。

……というわけではありませんが、最近、出勤前のBGMに15年も前に買った渡辺香津美の『The Spice of Life In Concert』(LD!)をかけています。渡辺香津美というとYMOの最初のワールドツアーに同行したギタリスト、という認識しかなかった私が1987年のライブを収録したこの作品を買ったのは、ドラムがBill Bruford、ベースがJeff Berlinという強力なコンビだったから。もちろん主役の渡辺香津美のギタープレイは物凄く、ポール・リード・スミスの超美麗なブルーのギターとシンセサイザーにつないだスタインバーガーの2本で、クリーントーンからハードディストーションまで曲中でも実にカラフルに音色を変えつつ、どちらかというとロック寄りの弾きまくりフレーズを全身を使って弾いてくれるのがうれしい限りですが、お目当ての2人も期待どおりで、シモンズのパッドを10枚ほども並べてエレクトロニックなドラムを叩くBillの神様のような手さばきと、自身の教則ビデオでも使っていた愛用のベース1本で強力なフレーズを繰り出すJeffの神様のような指さばきを堪能することができます。Jeffは「HIPER K」と「J.F.K.」の2曲でシンセサイザー(DX-7とPro One)も弾いており器用なところを見せていますが、やはり見どころ・聴きどころは多彩なベースプレイ。特に高速ソロは「CITY」と「HALF BLOOD」で、トリッキーなソロパフォーマンスは「BASS SOLO」(そのまんま……)で聴くことができるものの、むしろ随所に見せるセンスのよいダブル・ストップやコード・プレイ、それに「UNT」でさりげなく見せる倍音を重ねるようなデリケートで美しいタッピングが、彼のミュージシャンとしての孤高の能力を証明しています。

ライブならではのミスも正直に映像化されていて、ギターのトーンの切り替えが遅れたり、果敢なポリリズムで突っ込んだドラムがリズムに戻り損ねたりといった点もご愛嬌なのですが、そうしたミスがふっ飛ぶくらい、激しいギターソロの終わりに目で合図を送る渡辺香津美にBillがシモンズでレスポンスして3人がぴったりとフレーズを合わせていく瞬間の緊張感が素晴らしく、カメラワークもそんな3人の一瞬のやりとりを逃さずとらえていて、見ごたえ・聴きごたえある作品に仕上がっています。これは、いつかは来るであろう我が家のレーザーディスク再生機の寿命が尽きる日まで、私の愛聴盤であり続けるでしょう。