爆音

シネセゾン渋谷で、気になっていた映画『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』を観ました。

監督・脚本:青山真治
出演:浅野忠信 / 宮﨑あおい / 中原昌也 / 筒井康隆 / 戸田昌宏 / エリカ / 岡田茉莉子 他

2015年。映像を通じて感染するレミング病というウイルスによって、世界中で多くの人間が自殺している。富豪のミヤギは、息子夫婦をレミング病で失い、孫娘のハナもレミング病に侵されている。探偵のナツイシに調査を依頼したところ、ミズイとアスハラの奏でる音楽には発病を抑える効果があるのだとわかる。
ミヤギとハナとナツイシは、ミズイとアスハラが食事に立ち寄っているナビのペンションを訪れる。ミヤギは、孫娘のために演奏してほしいと二人に頼むものの、あっさりと断られる。ミズイにはエリコという恋人がいたのだが、レミング病に感染したエリコがミズイの目の前で自殺して以来、ミズイとアスハラは隠棲生活を続けていたのである。そんな折、レミング病に感染していたアスハラが自殺する。ミズイはハナのために演奏することを承諾する。
青空の下、目隠しをされたハナは、草原にそびえる四つの巨大なスピーカーに囲まれ、ミズイの奏でる大音量の音楽を全身で受け止める。その場に昏倒したハナは、ペンションで目を覚ます。彼女は、ミヤギとナツイシが先に帰ったことをナビから告げられる。ハナは、しばらくのあいだ、ここで生きていこうと決意するのであった。

うーん、これは論評が難しい。よそのサイトを見ても厳しい意見が多いし、あの爆音でのノイズには正直参ったけれど、しかし終盤、草原に四台の巨大なスピーカーを据えて浅野忠信がギターを凶暴に鳴らしきる映像、あるいは海沿いの笹の斜面の道の空虚な景色が、私は好きです。さらにラスト近く、万事めでたしと陽気に東京節を歌いながら帰路についていた筒井康隆と戸田昌宏の車が突然停まって、思い詰めたような表情のナツイシが外に出て自殺してしまう衝撃!

ウイルスが細菌兵器であったらしいこと、「音」がウイルスの活動を抑制するメカニズムなど、丹念に見ていけば実は設定も理解不能ではありませんが、ストーリーを追うというよりは、終末的でありながら牧歌的でもあるこの不思議な世界観に浸れればいいのかなと思います。惜しむらくは、ずっと必要最小限の台詞で映像と音とに語らせてきた演出の緊張感が、最後に生きることを思う宮﨑あおいのナレーションを入れたことで破綻してしまったこと。最後まで観客を突き放しきってしまえばよかったのに。

それにしても浅野忠信は、どの映画見ても素のままでしかないように見えます。評価に耐える演技をしていたのはペンションの経営者役の岡田茉莉子さんくらいで、その他の登場人物の素人っぽさもこの映画に入り込みきれなかった理由ではあったかもしれません。