買付

9月と言えばもはや秋、すなわちお酒の買付けの季節(本当か?)。そういうわけでこの日は、ワインを仕入れに勝沼へ出向きました。

どんより垂れ込めた雲は、休日を買い物に振り向けている不肖の山屋としてはうれしい限り。そして最初に訪れたのは、レトロな雰囲気がすてきな「くらむぼんワイン」です。すぐに気付く通り、その名前は宮沢賢治の『やまなし』に由来するもの。

「クラムボンはわらったよ。」
「クラムボンはかぷかぷわらったよ。」
「クラムボンは跳ねてわらったよ。」
「クラムボンはかぷかぷわらったよ。」
上の方や横の方は、青くくらく鋼のように見えます。そのなめらかな天井を、つぶつぶ暗い泡が流れて行きます。
「クラムボンはわらっていたよ。」
「クラムボンはかぷかぷわらったよ。」
「それならなぜクラムボンはわらったの。」
「知らない。」


創業100年を超える老舗の葡萄酒造家で、この築130年の建物はもともと別の場所にあった養蚕農家の家屋を移築したのだそう。

中には試飲ルームがあり、ここで500円払ってあれこれ試飲した上で、ボトルを買うのなら試飲代は返ってくるシステムです。極甘口から酸味すっきりまで、白から赤まで、さらには葡萄ジュースもあってほんの少しずつ飲みながらぐるり一周……幸せ。ここでは「シャーベットにしても美味」という「くらむボンボン ナイアガラ」を購入しました。

ついで向かったのは「イケダワイナリー」。こちらはご覧の通りモダンな造り。

ご主人もわざわざ出てきてお客に愛想を振りまいて下さいました(違)。ここでも白赤取り混ぜて10種類ほど試飲した上で、今回の買付けの本命となる「甲州エクセレント」を購入。ぶどうはもちろん「甲州」で、惹句にはほどよい果実味とキレのある酸味。やや甘口なのに、後味スッキリ!絶妙なバランスの白ワインとあり、その通りに酸味と甘みのバランスがよく、たいへん飲みやすいワインでした。

見るべき程の事をば見つ……と言いたいところですが、山梨に来てほうとうを食べない手はありません。

甲府に移動して、駅の南口すぐにある「小作」でほうとうをおいしくいただきました。馬刺しと煮貝とのセットにしたために本来ならビールが進むところですが、すでにワインを十分きこしめしているので、ここではアルコールなし。

食後、さらに足を伸ばした先は、前々から車窓から見て気になっていたお城=甲府城です。甲府と言えば武田信玄ですが、武田信玄は城らしい城は作らなかったのでは?と思っていたところ(それが本当かどうかは別として)やはりこの城は武田氏滅亡後の慶長年間に浅野氏によって完成されたもので、江戸時代には徳川将軍の子弟や、あの柳沢吉保が城主となっていました。特に、城主が実際に在城した柳沢氏の時代には御殿の新築や石垣の改修、城下町の整備がなされたそうですが、明治になって廃城となり、今は本丸を中心とした内城の一部が「舞鶴城公園」として整備・保護されているのだそうです。

駅から徒歩わずかで至る城跡は、石垣と坂が作る複雑な縄張りが面白く、ひときわ高い位置にある天守台からは甲府盆地を広く見渡すことができて、たいへん興味深いものでした。

そんな具合に、最後はワインの買付けが目的だったのか甲府城見物が目的だったのかわからなくなってしまいましたが、登山とは異なる楽しさを満喫した甲州行きでした。