世代

2003/04/24

4月24日、いつもよりずいぶん早く会社を出て帰路の電車の中、朝刊の読み残しを拾い読みしていたところ、国際面にタイの前外相へのインタビューが載っていたのですが、これがなかなか面白く、ひきつけられました。仏教国には珍しくイスラム教徒の前外相(国連事務総長の候補にもあげられた人物だとか)にイラク戦争の影響を聞くという内容だったのですが、イスラム諸国に対してなかなか辛口のコメントで、かつてイスラムが科学を温存・発展させてヨーロッパに伝えたように、イスラムも西欧流の自由と教育をとりいれ、貧困を脱しなければならない、つまりイスラム・ルネッサンスが必要だと力説していました。そして印象的だったのは、イスラム社会が変わるのにどれくらいの時間が必要か、とのインタビュアーの質問に「数世代」と答えていたこと。

ふりかえってみると、明治維新の為政者たちは日本が西欧式の立憲君主制度を確立して不平等条約の軛から脱するのに数世代を要すると考えていたかもしれないし、第二次世界大戦後の指導者たちも独立と経済的自立を回復するのにあるいは数世代を要すると考えながらかじ取りをしていただろうと思われます。しかし、今の我々には「世代」という単位で物事を考える発想は希薄だと思われ、むしろ「今さえよければ」的なふるまいが社会のあちこちに目につくくらいです。子をもうけていない私が世代を云々するのもおかしな話ではありますが、それにしてもタイの前外相の言葉は、はからずも今の日本に充満している近視眼的思考に対する痛烈な批判とも読めるようで考え込まされました。