大作

2002/02/11

このところ、超絶技巧バンドDream Theaterの新作『Six Degrees of Inner Turbulence』を繰り返し聴いています。

1999年にリリースされた前作の『Scenes from a Memory』も大作でしたが、今回はCD2枚組で、1枚目には5曲、2枚目には42分の曲が1曲(ボーナストラックが他に1曲)という恐るべき構成です。1枚目の各曲もそれぞれに聴きどころがありますが、やはり圧巻は2枚目の組曲「Six Degrees of Inner Turbulence」でしょう。本作はギターのJohn PetrucciとドラムのMike Portnoyの2人による共作といえる曲で、この曲名を知らされたキーボードのJordan Rudessは最初はなんて長い曲名なんだと思ったそうですが、『Tales from Topographic Oceans』というのもあるくらいだから、まぁいいか、と考え直したそうです(←ここでYesファンは爆笑することになっています)。

Kurzweilシンセサイザーをフルに活かしたオーケストレーションによる序曲(音づくりがちょっとチープなのが玉に傷……)を冒頭に置いて、リリカルなピアノからお約束の7拍子のリフが魅力的な「About To Crash」に移ってボーカルが入ってくると、今作の前作との決定的な違いであるボーカル・メロディの美しさが際立って心に響いてきます。続く「War Inside My Head」で不安をかきたてるようなギターのリフからリード・ボーカルのJames LaBrieとドラムのMike Portnoyのボーカルの掛け合いの後に、突如スピードアップして超ハードな「The Test That Stumped Them All」。Jordan RudessのシンセとJohn Petrucciのギターのソロの応酬が強烈で、本当にこれをライブで再現できるのかと心配になります。一転して深いエコーのかかったギターのコードとSEから優しくゆったりとしたボーカルとピアノ、そして伸びやかなギターソロがこの曲のテーマとなるメロディを弾く「Goodnight Kiss」。そしてバスドラのリズムキープの上にアコースティックギターが重なって、ポルタメントのきいた高い管楽器系の美しいシンセソロの後にまたも印象的なボーカルラインを聴かせる「Solitary Shell」はこの組曲のハイライトとも言える魅力的なパートです。後半の11/8拍子のブラス音も含め、ここでのシンセの音づくりは、まるで過去の偉大なプログレ・キーボーディスト達へのオマージュのよう。アコースティックギターソロ、ピアノソロに続いて一転してハードなギターのリフとオープン・ハイハットの連打がRushの「2112」のフィナーレを連想させる「About To Crash (Reprise)」、そして雄大な「Losing Time / Grand Finale」で全体を締めくくられる頃には、聴いているこちらもへとへとになってしまいます。

実はこの組曲は、精神分裂や妄想、自閉症など人格障害をテーマとしており、その歌詞は決して明るいものではありませんが、いつもながらのギターとドラムの超絶テクニックもさることながら、それら以上にボーカルやキーボードのメロディの美しさ、輝かしさがこの大作を極めて魅力的なものにしています。4月には彼等の来日が予定されており、今から非常に楽しみです。