伯国

2004/01/25

待ちに待った『Rush In Rio』。昨年の秋に予約したものの発売日が延期につぐ延期で、この間性懲りもなくやってくるHMVの通知メールに怒髪天になりながらとうとう年を越したのですが、ついに届いたDVDの映像は確かに待っただけの甲斐がありました。

Rushにとって初のブラジル公演の最終日、2002年11月のリオ・デ・ジャネイロのスタジアムでのコンサートは、明らかにサッカーの試合と混同していると思われる元気な聴衆の「オ〜レ〜オレオレオレ〜!」の歓呼で迎えられての「Tom Sawyer」から始まります。途中にインターミッションをはさんで26曲。さらにアンコールが3曲メドレーというもの凄い曲数の中には、新作『Vapor Trails』からの曲が数曲、「2112」「The Spirit of Radio」「Distant Early Warning」「The Big Money」といった定番曲、ギターのAlex Lifesonが途中で壊れたところを見せる「La Villa Strangiato」、珍しくGeddy Leeもアコースティックギターを弾く「Resist」など実に盛り沢山な曲が収められており、アンコールの「By-Tor and the Snow Dog」もうれしい驚き!また個人的に思い入れのある『Presto』からの「The Pass」も聴きものでした。

バンドの演奏はどの曲も素晴らしく、さすがにボーカルは衰えが目立つもののこれまでにも増してビシビシと強烈な指の力でFender Jazz Bassを弾きたおすGeddy Lee(右手のアップを見ると、指というより手首から先全体で弾いている感じ)や、相変わらず千手観音状態のNeil Peart(怒濤の要塞キットはもちろん、V-DrumやMIDIマリンバも大活躍)、体型と同様に音圧も太ってますます存在感を増したAlex Lifeson(一瞬Greg Lakeかと思った)の3人に脱帽ですが、それ以上に凄いのがラテン系の聴衆のノリで、超絶技巧の応酬になる「YYZ」ではインスト曲なのにメロディに合わせ4万人が拳を突き上げて大合唱するというブラジルならではの暴挙(?)にバンドも煽られっぱなしという感じ。「Free Will」の長い高速ソロでの聴衆のパワフル / リズミカルなリアクションも必見。

最後の「Working Man」までたっぷり聴かせて、おまけの2枚目にはツアーの記録。ブラジルのRushファンとの交流の様子が収録されていて、どのファンも心からの敬意をもってメンバーを迎え、中にはじかに会えて感激のあまり泣きだしそうな女の子もいるのを見ると、つくづく幸せなバンドだなと思います。でも、ブラジルのファンはRushが来るのを30年も待っていたのですから、それも不思議ではありません。もちろん我々も再来日を20年待ち続けているのですが、何しろおそろしくギャラが高く日本のプロモーターと折り合わないようです。それはともかく、マルチアングルでの「YYZ」やドラムソロ、隠しメニュー(Easter Eggs)での1975年の「Anthem」ではこちらが呆然とするほど若い3人の姿も見ることができて、Rushファンならずともぜひ観てほしいライブDVDです。