激走

2010/04/17

二日酔いで目覚めた朝、前日届いていたDVD『激走モンブラン!166km山岳レース』を見ました。これは、ヨーロッパアルプス最高峰のモン・ブランの周囲をぐるり一周166km走るトレイルランのレース「Ultra-Trail Du Mont-Blanc」の記録で、NHKのBS番組として昨年放映されたもの。主役は、トレイルランの世界では知らぬ者のない、あの鏑木毅さんです。

それにしても過酷!峠から眺めるモン・ブランの景観は圧倒的な美しさですが、なにしろコース全長166km、累積標高差9404mを46時間以内に完走しなければならず、ハセツネなど子供だましにしか見えなくなるほどのレースです。しかもトップランナーはここを20時間あまりでゴールするというのですから、考えられない世界。ただ走るだけでもその辛さは押してしるべし(最後は足の筋肉の激痛の戦いになっていました)ですが、さらに霧に巻かれたり標識誤りなどによるミスコースもあれば、疲労が内臓にダメージを与えてエネルギーを補給できなくなったりもします。そんな中、鏑木さんは堂々3位でゴールし、他にも2人の日本人がトップテン入りを果たしました。しかし、そうした勝者たちの笑顔とシャモニの町の賑やかさとは裏腹に、初参加の若いクールな日本人ランナーが、胃の不調から途中棄権しそうになりながらなんとかゴールを果たしたものの、自分の力を発揮できなかった不甲斐なさにゴール地点で泣き出した映像には、見ているこちらももらい泣きしそうになりました。

ともあれ、このDVDには本当に感動させられました。よーし、それなら自分も……とは都合よくいかないのが世間の習い。この日は「B-PUMP」でY女史とボルダリングをする約束になっていたのでランニングシューズならぬクライミングシューズをザックに詰めて荻窪へ向かいましたが、二日酔いの自分にこれといった成果があげられるはずもなく、Y女史が懸案の3級課題を片付けるのを指をくわえて見ていることしかできませんでした。

1手目のデッドポイントには、何が何でも落とす!と鬼気迫るものがあります……。また右端から左へ大きく手を伸ばすところは、私のリーチだと右手を残したまま左手でプッシュできる状態になるので、そこから右足を一歩上げるだけでゴールのリップをつかめてしまいますが、Y女史の場合は左に手をつくと右手を離すことになってしまうので、左のホールドのマッチからゴールをとりにいくややこしい手順になっています。

ここまではよかったのですが、今月初めのカラファテのセールでゲットしたスポルティバのシューズがまだ足に馴染んでいないらしく、普通なら無限の持久力にモノを言わせてがつがつ登るY女史が、この日はいつになく控えめな態度。そして3時間後、ついに堪忍袋の緒が切れたY女史はやおらはだしのままであれこれの課題を登り始めて、周囲の奇異の目をものともせず「足裏感覚100%!」などとほざきだしたのでした。