家木

2012/05/25

オフィスのミーティングスペースでレビューを始めようとしたところ、レビュー相手である同僚ユキからいきなり、「予約してある映画のチケットが1枚浮いてしまったんですが、今日行けませんか?」と機先を制されました。なんでも、同僚ノリちゃんともう1人の同僚(男性)との3人で行く予定で予約してあったのに、男性同僚が風邪引きのためにNGになってしまったのだそうです。私は2日後の日曜日に初めてTOEIC試験を受けることになっていて、この日の夜は試験のための予習時間にあてようと思っていたのですが、実はユキには旅行土産に木彫りのクマサケをもらったばかり。無下に断るわけにもいきません。うむー。

そうしたいきさつからユナイテッド・シネマ豊洲で見ることになった映画は、ジョージ・クルーニー主演の『ファミリー・ツリー』でした。

物語の舞台はハワイで、ボート事故で昏睡状態になった妻が浮気をしていたと知った主人公が、一度は激しく動揺しながらも、意を決して娘たちと共に浮気相手に会いにいくという話を軸にし、そこに先祖から伝わる広大な土地の売却問題が絡むお話。ストーリーの中では一見関係なさそうなこの二つの話が作品のテーマとしては密接に結びついていて、それまで仕事のために家庭に十分な時間を割けていなかった主人公が妻の事故を機に四苦八苦しながら娘たちとの絆を深めてゆく過程で、先祖から自分たちの世代へ、そして娘たち(以降)の世代へと綿々と受け継がれてゆくものの存在を意識するようになり、またそのことによって救われた主人公は、生命維持装置をはずされた妻に穏やかな心で別れを告げることができるようになります。

原題は『The Descendants』=「子孫たち」ですが、邦題の『ファミリー・ツリー』(=家系図)も系統樹的なイメージで作品の主題をうまく伝えていると思いました(寄らば大樹の「♩この〜木なんの木」の木とは違います)。随所に使われるハワイアン音楽に沿って非常にゆったりとした時間の流れ方をした作品で、ところどころに品の良いコミカルさをもちながらも繊細な演技で主人公の当惑、苦悩と再生を演じきったジョージ・クルーニーには脱帽。死の床の妻に静かに涙を流しながら別れを告げる場面は、泣かせます。そして映画は、ハワイアン・キルトを膝にかけて一つのソファに並んだ主人公と娘2人がテレビを見る場面で淡々と終わるのですが、3人の目線は(映画を見ている観客の方にある)テレビに向かっていながら、ほとんど無意識のうちに互いのキルトをかけ直したりアイスクリームをシェアしたりしており、そこにテレビから聞こえてくるのは、南極大陸の悠久の歴史を語るナレーション。

映画を見終わった後は、ららぽーと内の「H.B.GRILL」でお食事。しっかり食べて飲んで、映画の話もたくさんして、楽しく過ごしました。しかしTOEICの方は、どうなってしまうのか……。