氷室

2019/04/07

道玄坂上の交番から右手に入ってくねくねと曲がりゆく「裏渋谷通り」には、氷室と名のつく店舗(氷屋さん)が二つありました。

そのうちの一つである中島氷室は、たぶん私がこの辺りに住み始めた1996年には既に営業していなかったと思うのですが、道玄坂上の交番の背後が再開発されて2002年に高層ビル(現在「Eスペースタワー」)が建ったときにも、地上げに頑強に抵抗したかの様子でその地所を守り続けていました。

以来、廃屋状態のまま10数年がたってさすがに建物の傷みがひどくなり、あるときなどは屋上の瓦が落下していて安全面でも問題を生じるようになっていたのを心配しながらこの場所の前を毎日通勤していたのですが、今年3月、ついに中島氷室の建物の取壊しが始まってしまいました。

20年以上にわたって一種異質な存在感を発揮し続けたこの建物も、いざ取壊しにかかってしまえばあっという間。3月23日に足場が組まれ始めて、まったくの更地になったのは4月7日のことです。

かつては花柳界としての殷賑を誇ったという渋谷三業地の名残りであったかもしれない氷室の消失は、これまでも紹介してきたこの通りの変遷の一環として必然だったのでしょう。この更地が今後どのように活用されることになるにせよ、一つの時代の終わりのように感じられて少し寂しい気がします。

もっとも、もう一つの氷室である富士氷室さんは引き続き意気軒昂(?)。「Iceman is so cool!」と大書したカラフルな配送車を多数駆使して、近隣顧客に対し氷やおしぼりを毎日供給しまくっています。