究極

1999/09/05

ライブのお知らせ
日時: 1999年9月5日(日)
場所: 目黒LIVE STATION(ライヴステーション)
品川区上大崎2-13-35 ニューフジビルB1
TEL:03-3444-3464 JR目黒駅東口下車徒歩3分
出演バンド: 1.Aslan…………イエスのカヴァーバンド
2.ラキシス………ELPのカヴァーバンド
3.復刻創世記……ジェネシスのカヴァーバンド
時間: 開場4:30〜 開演5:00〜 9:45終了予定
出演順・出演時間予定: (各バンド:1時間20分)
5:00〜 Aslan
6:40〜 ラキシス
8:25〜 復刻創世記
チケット / 前売券: 2,000円 当日券2,300円
問い合わせはラキシスのみくにさんへ

という告知がお昼休みによく覗く「お気楽ぷろぐれサロン」に掲示されたので、「ラキシスのみくにさん」にメールで申し込んでチケットを送っていただき、わくわくしながら会場へ。これは「Progressive Rock Renaissance99 〜究極の怪奇骨董展覧会〜」という、わかる人には抱腹絶倒、わからない人にはさっぱりわからないであろうサブタイトルのついた企画。LIVE STATIONは目黒駅から歩いて2分のところにあり、開場時刻の16時半ちょうどに着いてみると既に何人かが並んでいました。早速整理券をもらうと番号は29番。狭い会場は前半分にパイプ椅子が並べてあり、前から3列目の右端に席をとることができました。開演までBGMにはLed Zeppelin が流れており、一般的にプログレのファンはZepが好き、という方程式を知った心憎い演出に感心します。

主催者の挨拶があってほぼ定刻通り17時頃に幕が開き、最初のバンド=Aslanが登場。お約束の「火の鳥」が流れる中立ち尽くすメンバーに間の悪い時が流れて、ようやく始まった曲は名曲「Roundabout」です。

Roundabout
かっこいい演奏。特にスネアがビルブラ風のスコーンとした音で気持ちよく、ボーカルも声がよく出ています。ベースはRickenbackerのChris Squireモデルでブリブリいわせ、ファルセットのコーラスも担当しています。
Close to the Edge
まさかのこの曲。ギターはちゃんとエレクトリックシタールを持ち込んでおり、気のないコーラスも含めてSteve Howeをきっちり再現。ボーカルの手の叩き方もまさにJon Andersonそのもの。第二楽章で出てくるB,Key,Drが4拍子 / Vo,Gが6拍子のポリリズムもばっちり決まっていました。
To Be Over
さらに意外だったのが実は大好きなこの曲。ボーカルもギターをもち、ベースはJazz Bass、ギターはTelecasterという布陣は、Patrick Moraz在籍時のライブ映像でも見られるもの。最後に出てくる速いシンセソロは音が小さかったのが残念ですが、Patrickの特徴であるピッチ・ベンディングもしっかり聴かせてくれました。
And You and I
こちらは『Yessongs』バージョン。アコギのフレーズで入るのではなく、全パートがいっぺんに入ってくるイントロの後、エレクトリックの12弦が曲を進めます。ベースはちゃんとカウンターメロディのコーラスを歌っていたほか、ベース・ペダルもこなし、ギターは最後のスティールギターまで完全に弾いてくれました。
Awaken
手製のハンド・ハープが出てきて拍手喝采。ちゃんと鳴り物をしゃんしゃん鳴らしていましたし、ボーカルの再現度は見事。それに変則的な11拍子のこの曲がこんなにロックしていたとは再発見。ただ、ハープの音が情けなかったのは御愛嬌で、せめてエコーを深くかけてほしいところでした。ベースも本当はトリプルネックを用意していたのに、リハのときに故障してしまったとのこと。この曲は自分も練習したことがありますが、ベースは単体でもけっこう広い音域をカバーするダイナミックなフレーズである上にペダルも踏まなければならず、おまけにコーラスも重要、とかなり忙しい曲です。
Siberian Khatru
最後はイントロ15拍子のこの曲。ちょっとリズムがよれたり、ハープシコードソロの音づくりがいまひとつだったりしましたが、なかなかの出来。ちなみにこの曲はベースに見どころが多くしっかり観察していましたが、ハーモニクス・フレーズは7フレット / 12フレット、全ての弦をいっぺんに鳴らすコードの部分はネックを握りこまずセーハ、と本家と異なる部分もありました(Chrisは19フレット / 12フレット、コードの4弦はあのでかい手でネックを握って親指で押さえます)。

続いて約20分のインターバルの後に、Emerson, Lake & PalmerをカバーするLachesis。「明るいプログレ」をやります、とのことでしたが、今日一番の演奏でした。キーボードは7台、メインで使っているのは上からKORG 01/W、YAMAHA DX7、Hammond XB-1の3台。ベースはJazz Bass。ドラムは通常のセットにRoland Octapadを組み合わせて効果音系を巧みに再現していました。

The Score
意外にもEmerson, Lake & Powellのこの曲でスタート。しかしもともとドラマティックに盛り上がる曲だけにオープニングには最適とも言えます。
Tank〜The Endless Enigma Part I〜The Hut of Baba Yaga〜The Great Hut of Kiev
メドレーは面白いとりあわせとなりました。こうして目の前で"Tank"の難度の高い演奏を見ると、実はCarl Palmerはやっぱりうまかったのか?と思えてきます。
Pirates
この曲はお気に入り。演奏に入る前に歌詞解説(「海賊の絵」つき)があって親切。冒頭のリアルなシンセ音に鳥肌が立ち、特徴的なLFOのフリケンシー操作も決まりました。この曲もそうですが、キーボードの音色の再現度が3バンドの中で群を抜いて凄く、演奏も完璧でKeith Emersonがそこにいるみたいです。
Lucky Man
ベースがアコギに持ち替えて「The Sage」のさわりをやった後にこの曲。ここでも後半のポルタメントの効いたシンセが気持ちよし。
Karn Evil 9
「最後の曲になりました」とMCが入りますが、ラストに30分強のこの大曲を残しているのでは持ち時間の半分くらいで最後になるのも当たり前。第一印象から第三印象までを通して演奏してくれました。第一印象のギターソロはディストーションばりばりでしたがもう少し艶やかなトーンの方がよかったかな?また第二印象のピアノはPAさんが音を作りきれていなかった感じ。しかし第一印象のオルガンによる超強力グリッサンドやパート1とパート2の間のSample & Holdで作られたシンセ音、第三印象のディストーション・ベース、コンピュータ・ボイス(担当はドラマー)、最後の自動アルペジオがアルバムそのままに再現されて大満足。
America〜Rondo
「アンコール!」の声に予定通り(?)演奏されたこの曲。ちゃんとパフォーマンス用のオルガン(の匡体の中にKORG X5Dを仕込んだもの)が用意されており、リバーブの衝撃音、馬のり、ナイフ(!)、逆サイドからの「Toccata and Fugue」まできっちり見せてくれました。

最後はGenesisのカバー復刻創世記。ボーカルはドラムを兼務し、ベースは12弦とのダブルネックにタウラス、ギターはLesPaulとこだわりのバンド編成。ただボーカルがちょっと体格が良すぎるのが……ですが、その代わりショーマンシップも飛び抜けていました。ちなみにこちらは「明るく楽しいプログレ」だそうです。

I Know What I Like
ちょっと軽めのこの曲でスタート。1976年のライブの映像で見られるタンバリン・ショーがちゃんとあり、例のタンバリンを車のハンドルに見立てたパフォーマンスも見せてくれました。
The Fountain of Salmacis
実は原曲をちゃんと聴いたことがないのですが、イントロのベースとメロトロンでのドラマティックなコード進行が感動的。
Firth of Fifth
時間が押していたためカットする予定だったようですが、ボーカルがいきなり「やります」と宣言すると他のメンバーは「聞いてないよ」と大慌て、キーボードは4台のシンセのセッティングを全部変更する騒ぎに。だいたいプログレで1曲カットすると「えぇっ、8分もですか?」ということになるから簡単には曲を間引けない、とボーカルが暴露して大笑い。イントロのピアノ抜きのバージョンですが、ベースがダブルネックでベースのフレーズと12弦のアルペジオを交互に弾く部分も含めて本家に忠実な演奏でした。
Inside and Out
日本では発表されなかったレアな曲とのこと。Phil Collins風の甘い曲でしたが、最後はしっかりロックしていました。
Supper's Ready
青春官能小説「続・ロミ男とジュリ恵」の朗読(本物のGenesisの初来日時には、Phil Collinsが日英チャンポンで語った後に「The Cinema Show」になりました)の後に、12弦アコースティックギター3本でスタート。この曲も25分程と長い曲。途中の子供のコーラスや雑踏音はテープを使い、本家の演奏を忠実に再現。ハイライトの"Apocalypse In 9/8"ではつけヒゲで1976年のPhilを演じ、そのままツインドラムに突入。
In the Cage〜The Cinema Show〜The Colony of Slippermen〜Afterglow
Genesisのライブでは欠かせないこのメドレー、「革ジャンのRael」も出てきてしっかり聴かせてくれましたが、肝心の「The Cinema Show」のシンセソロの音が小さかったのが残念。Aslanでもそうでしたが、ギターやベースと違ってダイナミクスをつけにくいキーボードの音量調節は実に難しいものです。
Drum Duet〜Los Endos
「Afterglow」でおしまいかと思っていたら、いきなりドラムデュエットが始まりびっくり。ここでこれが来るとすると……と期待した通り、そのまま"Los Endos"に移って大団円。興奮のうちにプログラムを終了しました。

満足度の高い演奏にニコニコしながら会場を後にしましたが、それぞれ編成の違う三つのバンドが、しかも頻繁に楽器を替えて、聴きどころがどんどん移る長い曲を次々に演奏するのですから、PA、照明をはじめ裏方さんも大変だったでしょう。本当にお疲れさまでした。