洞門

昨年に引き続いて、北海道在住の友人カト・スー両氏との登山。今回は、渡島半島最高峰の狩場山を目指すことにしました。

1999/07/30

新千歳空港に降り立ってみると、天気は雨。沖縄方面に近づいた台風の影響で前線の活動が活発になり、ここ数日北海道は雨に降り込められているのでした。天塩岳が流れた昨年の記憶が蘇りますが、ともあれ空港の出口でカト・スー両氏と1年ぶりの再会を喜び合いました。今日は宿となる二股ラジウム温泉までの移動日なので、途中支笏湖畔の「苔の洞門」に立ち寄ることにしました。

「苔の洞門」は支笏湖の南、樽前山が噴火したときに流れ出た溶岩の割れ目が沢水等により侵食されてできた自然の回廊状の地形に苔が密生したもので、駐車場から砂の道を10分程歩いた洞門入口から約420mにわたって続いています。苔の触感は毛皮のようにさらさらとして親しみやすく、道も歩きやすいものでした。終点からはさらに樽前山山頂までの登山道となっていますが、ここはヒグマが頻出するところなので一般観光客は奥には進めません。我々もおとなしく引き返すことにしました。

続いて、京極の「ふきだし公園」へ移動。ここは後方羊蹄山の地下水が地表に激しく噴出しているところで、一日の湧出量はなんと約8万トン。環境庁の「名水百選」にも選ばれており、我々も冷たい水をたっぷり飲んでから水筒に詰めました。ちなみに、このような湧水地点は後方羊蹄山をぐるりと取り囲むように17カ所あり、そのほとんどが標高220〜260mに位置しています。

さて、いよいよ今宵の宿となる二股ラジウム温泉へ。イエローストーン公園とここにしかないという炭酸カルシウムの大きなドームがこの温泉の名物ですが、イエローストーン公園と並べるのはちょっとどうかとは思うものの、見事に成長したドームの横にしつらえられた露天風呂はなんとも楽しいものでした。湯を口に含んでみると海水のようにしょっぱく、宿の効能書によれば骨・歯・内臓を強化してくれるのだそうです。

夜は例によって、部屋で酒盛り。生チョコレートや牛たんの薫製や鮭のはさみ漬けを肴にビールが空き、ワインの瓶が空き、昆布焼酎が1本空いて、すっかり気持ちよくなって眠りにつきましたが、窓の外では雨音が止むことはありませんでした。

1999/07/31

8時から朝食のところを7時にお弁当を作ってもらっていたのですが、外はあいにくの天気。あろうことか、大雨洪水警報と雷強風波浪濃霧注意報が出されています。TVの向こうの東京の空はいかにも暑そうに晴れているのに、と地団駄踏んでもどうにもなりません。残念ながら登山はあえなく中止となりました。

こうなるとあとは観光客モードに徹するよりほかなく、ガイドブックとにらめっこをして、まずは洞爺湖畔の火山科学館を訪ねることにしました。バスターミナルの上にある博物館ということなのであまり期待していなかったのですが、意外に展示が充実しており、特に体験ホールでの映像で紹介された昭和52年の有珠山大噴火の模様は迫力満点で驚かされました。

ついでカト氏の案内で洞爺湖北岸にある奇妙な外観・しゃれた内装の不思議な店「夢遊館」(写真下)へ。実はこれがなんと蕎麦屋さん。注文を受けてから作り始めるこだわりの手打ち蕎麦で、腰の強いおいしい蕎麦に満足しました。

最後に、カト氏の住まう室蘭市へ。全長1,380mの美しい白鳥大橋を走って半島部に渡り、展望台から室蘭市街を一望したのち地球岬へ。ここに立つと地球が丸いのを実感できるから地球岬……というわけではなく、「ポロ・チケップ」(親である断崖)の「チケップ」が訛って「チケウエ」→「チキウ」となったものだそうです。展望は雄大で、水平線が遠く長く広がり、駒ヶ岳方面の対岸もうっすらと見通すことができました。そして海になだれ落ちる断崖地帯トッカリショを横から眺めて観光スケジュールは終わり。カト氏と別れ、スー氏に札幌まで送ってもらいました。

それにしても雨にたたられて山に登れなかったのは残念無念……。