毀釈

2001/03/24

この1カ月、アフガニスタンのバーミヤンで行われていた二体の大石仏破壊のニュースに悲しい思いをしていましたが、さらにガンダーラ美術で有名なクシャナ朝のカニシカ王の像(カブール博物館)も破壊されたと聞き、呆然としています。

アレクサンドロス大王の遠征で中央アジアに残されたギリシア文化がインド文化と融合してできあがったガンダーラ美術。その担い手であったクシャナ朝は、モンゴル高原の南から匈奴に逐われてアム川上流に移り住んだ大月氏国の五侯の一つイラン系のクシャナ族が独立したもので、第3代カニシカ王(2世紀)は仏教保護者としてマウリヤ朝のアショカ王(前3世紀)と並び称せられた王です。その偉大な王の姿を今に伝える像の破壊は、人類の歴史に対する冒とく、文明への罪といっていいでしょう。

バーミヤンの石仏はクシャナ朝より後に造られたもので、7世紀に玄奘三蔵が訪れたときは金色に輝いていたとされていますが、その後のアラブやモンゴルの侵寇によっても完全な破壊からは免れていたものです。しかし、それも21世紀の今日になって、より進化した文明の力=破壊兵器によって息の根を止められてしまったようです。

ただし、翻れば西欧社会もキリスト教の布教の名のもとに幾多の文明・文化を跡形もなく滅ぼしてきていますし、スケールは比較にならないにせよ我々もまた廃仏毀釈の経験をもっています。だからもしかすると、アフガニスタンでタリバンが行っている行為を、嘆くことはできても非難することは難しいのかもしれません。もし非難できる余地があるとしたら、人類が過去に学び精神的な成長を遂げうる種であるという未来への希望を打ち砕いたことにのみ求められるでしょう。しかし、それも我々の身勝手なオプティミズムに過ぎなかったのかもしれません。