米国
2002/11/24
先週に引き続いて(?)King Crimsonの話題です。
私が愛してやまないJohn Wetton・Bill Bruford在籍時のKing Crimsonのライブ『USA』は、1970年代に公式に発売された彼等の唯一のライブ音源であったのに、Robert Frippの意向でなかなか再発されなかったいわくつきの作品。それがRobert Frippの気が変わったのか今年の10月についに再発売(30th ANNIVERSARY EDITION)されて、しかもデジタル・リマスターが施され、オリジナル盤には含まれていなかった「Fracture」「Starless」の2曲までついているという出血大サービスなのだから買わないわけにはいきません。
今ではこの時代の彼等のライブ音源も(Fripp商法のおかげで)かなり出ているので演奏内容自体にそれほど新鮮さがあるわけではなく、今回追加された2曲にしてもむしろ演奏の荒さが耳につくのですが、やはりなんべん聴いても「Exiles」「Asbury Park」の2曲は最高です。
John Wettonのリードベースが縦横無尽に駆け回る「Asbury Park」は、『Red』に収録されていた「Providence」と共にインプロヴィゼーションのスリルの中でJohn Wettonのベースプレイヤーとしての能力を最大限に発揮させたテイクですし、それ以上に私が好きなのはなんといっても「Exiles」。David Crossはこの曲のヴァイオリンを弾くことだけを理由にKing Crimsonに参加していたのではないかと思えるほど、美しく、抒情性に溢れた名曲です。スタジオテイクの『Larks’ Tongues in Aspic』版も大好きですが、このライブ版でもRobert FrippとDavid Crossがステージの両翼でメロトロンの流麗なテーマフレーズを交互に弾きながらギターとヴァイオリンでソロをとりあい、中央ではBill Brufordのめずらしくデリケートなドラムの上にJohn Wettonのボーカルと、ボーカル以上にメロディアスに歌うベースが乗って、これほど完成度の高い曲・演奏は他に例をみないほど。わけてもJohn Wettonのベースラインはこの時代の彼ならではのもので、メカニカル系のChris Squireにはたぶん弾けないでしょうし、「産業化」後のJohn Wetton自身にも弾けないであろう種類のセンスのよさがあります。
この1974年のUSツアーの後、即興演奏の緊張とヴァイオリンという楽器では太刀打ちできない大音量、そしてハードなツアー生活に疲れたDavid Crossがバンドを脱退。その後にオリジナルメンバーのIan McDonaldが参加して『Red』が制作され、John WettonもBill Brufordもこの組み合わせに手応えを感じていたようなのに、Robert Frippの突然の解散宣言でKing Crimsonは活動にいったん終止符を打ってしまったのがいかにも残念です。このメンバーでアルバムを出していたら、どんなに素晴らしい作品になっていたことか。
1980年代に入り、Robert FrippとBill BrufordにあのTony LevinとAdrian Belewを加えてKing Crimsonは再生するものの、私にとってのKing Crimsonは今も昔も、この『USA』のフォーマットでしかあり得ません。