事典
2004/11/13
荒俣宏氏の『歌舞伎キャラクター事典』を購入。歌舞伎のさまざまな登場人物を「美しき女形」「伝説の人物と二枚目」「恋と人情、正義」「悪党、毒婦と暴れ者」「魔術師と妖怪変化」に分けて1人(1組)1〜2ページで解説したもので、人物の説明、登場する芝居の粗筋、歴史的背景、名台詞などをコンパクトにまとめています。
早速気になる人物を何人かひいてみると、歴史上の実在の人物でも著名人(曽我兄弟とか熊谷直実とか)はだいたい知っているとはいえ、たとえば江戸っ子の男伊達を体現したような花川戸助六(助六由縁江戸桜)が、モデルは京都の侠客だったとか、「封印切」の忠兵衛と梅川(恋飛脚大和往来)の事件は実話だったとか思わぬエピソードがちりばめられていて楽しく読めます。といってもあくまで事典だから、読み物として読むのではなく、これから観ようとする芝居の予習に使おうというわけです。
ところで上の表紙写真でもわかるように、この事典では各キャラクターを面白おかしく、しかもきちんと芝居のツボをおさえた姿で描くイラストが添えられています。この絵を描いているいまいかおるさんの歌舞伎本を私は他に2冊持っていて、それが下の『イラストガイド歌舞伎入門』と『まんがDE歌舞伎』です。
左はもう手に入らないようですが、右の『まんがDE歌舞伎』は『イラストガイド歌舞伎入門』をさらにパワーアップさせていて秀逸。特にこの本では「通し」にこだわったストーリー解説をしていて、例えば通し上演といいながら「寺子屋」で終わることの多い「菅原伝授手習鑑」も、「道明寺」と「寺子屋」を漫画スタイルで、その前後と合間をキレのいい文章でダイジェストしてきっちり説明してくれていて、目から鱗。なるほど、こういうお話だったのか……。というわけで、これから歌舞伎を観てみようかという人にも、歌舞伎半可通(←それは自分)にも、お勧めの一冊。