大兄

2006/10/06

もうずいぶん前のこと、もうなくなってしまった下北沢のバー「Revolver」で隣り合わせになった男性と音楽談義になったことがあります。彼はAORのファンなのだそうで「やっぱソフト&メロウですよ」と堂々とのたまい、それを聞いた私は「貴様、それでも男か!」と相手の胸ぐらをつかみ……はもちろんしなかったのですが、世の中広いものだと感心はしたのでした。かたやRushの哲人ドラマーNeil Peartは、かつてこう言い放ったことがあります。

AORの甘ったるい歌は、糖尿病患者の害になる。

う〜む、さすがにそこまで言い切る自信はないし、実はそこまで捨てたものでもないと思うのは、先日のDJイベント『Shining Star』でrobin☆さんがかけてくれたGino Vannelliの「Santa Rosa」がVinnie Colaiutaのシャープなドラミングで実に引き締まった曲になっていたから。これまでGino Vannelliを一度も聴いたことがなかったのですが、それならとこの曲を含む『Nightwalker』を購入してみました。ま、結論としてはAORは私の体質に合わないということを再確認することになってしまったのですが、これもまたよし。そうしたこうしたも含めていろいろな音楽に節操なく手を出してみるのは決して悪くはなくて、ロック一筋の私のCD棚にもショパンはあるしドビュッシーはお気に入り、フュージョンもあればボサノバも、フォルクローレもフラメンコも、京のわらべ歌や祇園囃子も、さらにはEddie Jobsonがプロデュースしたブルガリア女性合唱団なんていうのもあります。松たか子やPuffyもありますね。当然、当たりもあればハズレもあります。

先日(10月4日)の日経新聞に「『検索』の次は『推薦』エンジン」という記事が載っていました。これは米国の会社のサービスで、雇った音楽家を使って既存の音楽のメロディやリズムの強弱など400項目(音楽ゲノム)を数値化し、これをもとに、自分の好きなアーティストや曲名をサイトに入力した利用者に「それならこれも気に入るはず」と類似の曲を自動的に選んでくれるというもの。既に利用者は300万人を超えているということでした。もちろんAmazonなどでも書籍やCD、DVDのレコメンデーションを行ってはいますが、それにしてもこの記事を読んだときは、これがいいことなのかどうなのか、ちょっと首をひねってしまいました。この仕組みのおかげで、まだ無名のミュージシャンの音楽に日が当たる可能性が増すという意味ではポジティブに評価したい気もしますが、一方で、何も若いうちから自分の嗜好の殻に閉じこもらなくてもいいじゃないかという気もします。何事にも、サプライズや「突然変異」は大事だと思うのですが……。

さて、「検索」といえばやはりGoogle。ここで後日への記録も兼ねて私のGoogle活用法の一端を書き出してみます。

一つはGmail。私はプライベートのメールアドレスを5種類(@nifty/.Mac/Yahoo!/Gmail/携帯)持っており、メインのアドレスは@niftyなのですが、Gmailの強力なスパムフィルターと無尽蔵の容量によるバックアップ機能を利用したいので、ケータイメール以外は全て@niftyを経由してGmailに転送する設定としています。ただ、それでは全てオンラインで見ればいいかというと、Mac OS X標準のメーラーであるMailはiCalやAddressbookと連動していて便利なので、GmailもPOP設定をしてローカルにとりこんで読み書きをする昔ながらのスタイルで活用しています。また、Gmailは私の携帯電話(FOMA)ではモバイルで見ることができないので、@niftyの方も転送と同時に削除ではなく、Mailで受信(ゴミ箱へ直行)してから1週間サーバに残す設定にしてあります。これらの設定のおかげで、今までと変わらない利便性を享受しながらも、スパムに悩まされるストレスが激減しました。

もう一つはGoogle Calendar。これまたMac OS X標準のスケジューラーiCalはオンラインでの書き込みができないので、仕事の都合を職場から記入できず不便に思っていました。そこで、Google Calendarで仕事用のスケジュール表を作成し、予定を公開(ただし仕事の予定が第三者にもオープンでは困るので、「busy」とのみ表示)。iCal側ではこの仕事の予定を自動的にインポートするように設定し、かたやGoogle Calendar側にもiCalが公開しているプライベートの予定をインポートするようにしました。おかげで自宅でも職場でも、仕事と私用とを混在させた状態でスケジュールを見ることができるようになりました。

こんな具合にGoogleのおかげでMacなデジタルライフを快適に過ごしているわけですが、最近気になるのはAppleとGoogleの接近度合いです。GoogleのCEOがAppleの取締役になったのは今年の8月の話ですが、それ以前から、たとえばMac OS XのブラウザSafariへのGoogle検索の組み込み、iCalとGoogle Calendarのルック&フィールの酷似など、両社の蜜月を窺わせる事象はいろいろあります。そのうちGoogle自身が推薦エンジンを確立し、iTunes Storeと連動して世界中の嗜好を支配するなんてことも、あるのでしょうか。もしそんなことになれば、それは、Macが1984年に伝説的なCMで闘いを挑んでみせた相手、Big Brotherの姿そのものではないでしょうか。

……妄想ですかね。