品質

2007/01/16

日ごろチェックしているブログ「まるちゃんの情報セキュリティ気まぐれ日記」で、話題の不二家の件が取り上げられていました。不二家はISO9001(品質管理規格)とISO14001(環境管理規格)の認証を受けているのですが、消費期限切れの原材料を使った洋菓子を製造・出荷した事件を受けて、経済産業省が認証機関に対して臨時審査を求めたというもの。相も変わらず個別事案に口を出したがるMETI……という点はさておいて、目を疑ったのは上記ブログに紹介されていた以下のくだり。

不二家は11日の会見で、「埼玉工場はISO認証を受けており、廃棄物が一定量を超えると、是正報告書を書かなくてはいけないため、(消費期限切れの牛乳を)捨てづらかった面もあったようだ」と釈明した。この点についても、〔(財)日本適合性認定〕協会は「ISOは、品質管理や環境への配慮を目的としているのに、体裁を整えることを優先しては本末転倒」と事態を重く見ている。

この「釈明」はさすがにまずいですね。記事通りなら少なくとも工場の現場がISO認証の目的を履き違えていることは一目瞭然ですが、発言者が「そうした心情は理解できる」的なニュアンスを出してしまったのだとしたら、いくらなんでもマスコミ対応における危機管理意識がなさ過ぎます。公表遅れが発覚した時点でマスコミは最初から犯罪者扱いで企業に接してきているのですから、そこからリカバリーするためには未来に向かって消費者を味方につけるような情報を発信し続けなければならないはず。それなのに上記の発言では、火に油を注ぐようなものです。せめて「もったいない(© ワンガリ・マータイ女史)と思った」くらいにしておけば……というのもムリか。いずれにせよ、これは明らかに広報担当者がするべき仕事をしていないですね。ちなみに、法務担当の仕事の本質はリスク管理・危機管理なので、私も広報全般について「一般教養」程度の知識は持ち合わせていますが、この事故発生時のマスコミ対応くらい経営者と広報・法務両担当者の緻密な連携が求められる場面はありません。

また、不二家の商品が一般の商品に比べて高いかどうかは承知していませんが、ブランド力のある商品に対して消費者がより多くの対価を支払うのは、その背後にあるより高度な品質管理システムのコストが価格に転嫁されることを消費者が承諾している面もあるはずで、そういう意味では品質管理の失敗は消費者との信義則違反ということも言えるかもしれません。その観点から、ここで紹介しておきたいのは、kuroさんのお店のケーキの話。いまや北浦和にこの店ありとWebでの評判も高い洋菓子店「くるみの木」立ち上げ時の話をkuroさんに聞いたことがありますが、まだ知名度もさほどなく固定客がついていなかった頃から、基本的に残ったケーキは当日中に全部処分していたとのこと。先月、まっきーの誕生ケーキを注文したときにもkuroさんから「その日のうちに食べるかどうか」の確認があって、翌日以降に食べることになる旨を伝えると、用意してくれたのは風味があまり変わらない洋梨タルト。kuroさん、さすがです。

kuroさんの店で当たり前のように行われている(でも本当は大変な)誠実なものづくりの姿勢が日本の企業の競争力の源泉であったはずなのですが、うーん。