新豚

2007/03/27

根っからの文系な私ではあるものの、実はこういうサイエンス系の雑誌や本を読むのが大好き。

現在販売中の雑誌『Newton』の特集は、「進化のビッグバン」です。これは何かというと、今から5億4000万年前の古生代カンブリア紀において、わずか1000万年のうちに動物種が爆発的に多様化した現象を指します。それまでカイメンやイソギンチャク、クシクラゲといった軟体動物しかいなかった海に、突如としてこんなの(© Newton)やこんなの(© Newton)がわさわさと生まれて泳ぎ回るようになったのだからおそろしい。もしタイムマシンでこの時代に降り立つことができたとしても、こうした生き物がうじゃうじゃしている海に入りたいとは(生物学者以外)誰も思わないでしょう。

ちょうど2月頃に苦労しながら読了したアンドリュー・パーカーの『眼の誕生』が、まさにこのカンブリア爆発の原因を探った本で、彼の説は「光スイッチ説」。すなわち、先カンブリア紀において体内の体制的には既に多様化していた動物たちが、視覚=眼を獲得したことにより深刻な淘汰圧と化した捕食・被捕食の関係の中で、急激に外部形態を変化させたのだと説きます。捕食者は獲物を追いかける遊泳能力と殺戮のための口器や肢を、被捕食者は防御のための殻や棘と逃走用の足・鰭を必要とし、このことが硬質な外装を生み出したというわけです。

『Newton』の記事の中でもこの「光スイッチ説」は大きな扱いを受けていて、『眼の誕生』の中で言及されてはいましたが見ることはできなかった「齧られた痕跡のある三葉虫」をはじめとするたくさんの化石の写真や多彩なイラストが楽しく、また『眼の誕生』の理解を補強してくれます。ただし、慎重な編集部は、「光スイッチ説」はまだ定説ではない、と断わることを忘れてはいません。

なお、以下はクライミング仲間Y女史との2月某日の会話。ちょうど私が『眼の誕生』を読んでいる途中で、その内容をY女史にかいつまんで説明したところでの質疑応答です。

Y「カンブリア紀って、いつ頃なんですか?」
J「えーと、縄文時代と弥生時代の間くらいかな」
Y「なんだ!そんなに古い話じゃないんですね」

……冗談を真に受けないで下さい。