出成

2007/03/30

山登りをする者には、2種類の人種しかいません。デナリに登りたいと願いながら果たせずにいる者と、幸福にもデナリの頂に立つことができた者です。残念ながら私は前者ですが、山仲間の山ヤ氏は後者に属します。デナリ=マッキンリー山(6,194m)はアラスカの、そして北米大陸の最高峰であり、麓からの標高差と緯度の高さも加わって、厳しく大きな目標として登山愛好者の前に立ちはだかります。もちろん、植村直己氏や山田昇氏他が遭難した山という点でも日本人には因縁浅からぬ山です。

▲Google Earthで見たデナリ。ノーマルルートは左下から右上へと登ることになる。

山ヤ氏は、昨年の6月にIARC-JAC Mt.McKINLEY EXPEDITIONの一員として標高5,715mに設置されたWeather Station(右の写真)の保守作業に従事し、そのついで(?)にデナリに登頂してきています。その一部始終は彼のホームページ「すべての高い山に登れ!」で見ることができるのですが、山ヤ氏と一緒にデナリ登頂を果たした伊藤征一郎氏がこの日の夜に同氏の勤務先であるパタゴニア渋谷店でのストアイベントとしてデナリ遠征の模様を紹介してくれるというので、会社帰りに行ってきました。

伊藤氏はもともとバックパッカーとして何度もアラスカのバックカントリーを歩いており、そのたびにデナリを見上げながら、徐々に高みへの憧れを強めていった人であるようです。説明は、デナリ国立公園とデナリの概要、気象観測プロジェクトのあらまし、そして登頂のための遵守事項・装備・行程などをPowerPointの資料で丁寧に解説し、その後豊富な写真のスライドショーで3週間にわたったエクスペディションの全貌をビジュアルに見せてくれるというもの。鮮やかで生き生きとした写真の数々と、伊藤氏の誠実そのものの語り口での解説が素晴らしく、すっかり感情移入してしまって、1時間半のイベントがまったく長さを感じさせませんでした。誘ってくれた山ヤさん、ありがとうございました。

なお、写真の多くはIARCのサイトで見ることができますが、中でも私のお気に入りは、上記イベントでも紹介されたこの1枚です。

この楽しいパフォーマンスが標高6,000mで行われているということが、俄には信じられません。しかし、奥に見えている稜線の最も高いところこそ、まぎれもなくデナリ山頂なのです。