伝統

2007/07/24

皆さんは、正しい寿司屋への入り方をご存知でしょうか?そう、もちろん、表に掛かった暖簾の左から三つ目の切れ込みの右側、斜め48度に3.2インチ上がった部分に手の甲を当て、めくるのです。

さすがにその程度のことは日本人なら誰でも知っていると思いますが、1人で入店するときは目で若干の申し訳なさを表す必要があるというマナーは意外に見逃されているのではないでしょうか。ジャパンカルチャーラボ制作のDVD『The Japanese Tradition 日本の形』は、このように日本人でも知っているようで知らない日本の礼儀作法を、「宴」「折り紙」「おにぎり」などなどビジュアルに解説していて、とても勉強になります。

当然、寿司屋での振る舞い方についても、入店から着席、注文、そしておあいそに至るまでの一連のプロセスを懇切丁寧な再現映像で学ぶことができます。本来は外国人向けに美しい日本の伝統を紹介するために制作されたようですが、古き良き日本の心を失いつつある子供たちにも、情操教育の一貫としてぜひ見てもらいたいものです。

……というのは真っ赤なウソで、teevee graphics小島淳二とラーメンズ小林賢太郎のユニット”NAMIKIBASHI”の手になるこのショートフィルム集で描かれるのは、誰がどう見ても珍妙なお箸の握り方やおにぎりの結び方、お茶の淹れ方。独特の雰囲気をもつナレーションで紹介されるこれらの作法(?)のいずれも真面目におかしく、さりながらちょっと言葉で説明するのは難しいので、ぜひ自分の目で確かめてみて下さい。

私の見るところ、パロディとしての切れ味の良さはボーナストラックに入っている「鮨」が一番ですが、都会から田舎へ帰省した家族のひと夏を大人と子供の両方の視線から描き分けた「お盆休み」「夏休み」の連作が、単なる笑いだけでなくほのぼのと郷愁をそそって文句なしに秀逸。それに、ここに登場するきれいなお姉さんには本当に惚れてしまいそう。これを見るためだけにでも、本作を買う価値がある、と思います。