浪漫

2009/08/28

19時半過ぎから、上野毛のキルチュール・インターナショナル・クラブで「真夏のひとときコラボレーションサロンコンサート」というイベントに参加。これはありか先生の企画になるもので、前にも紹介したように、ショパンが愛用していたプレイエル社製のピアノを用いたサロン形式の演奏会です。

閑静な住宅街の中に現れた、キルチュール・インターナショナル・クラブ。ハイソな雰囲気。そして登場人物の右はグラマラスな美人声楽家・仁田紫乃さん、左は上品なお顔で時折「わはは!」と豪傑笑いをかますピアニスト・湯田亜希さん。お客は20人くらい(?)の親密な空間で、プロの音楽を聞かせていただきました。この日、演奏されたのは以下の曲目でした。

  • 第一部(バロック)
    • G線上のアリア - J.S.バッハ
    • ゴールドベルク変奏曲(アリア) - J.S.バッハ
    • 芸術家 - F.クープラン
    • オペラ「リナルド」より「私を泣かせてください」 - G.F.ヘンデル
    • オペラ「セルセ」より「樹木の陰で」 - G.F.ヘンデル
    • クラヴィアチェンバロのためのソナタ 1番L.23 - D.スカルラッティ
    • 恋する蝶のように - D.スカルラッティ
  • 第二部(ロマン派)
    • 子犬のワルツ - F.F.ショパン
    • 歌曲集「夏の夜」より「ヴィラネル」 - L.H.ベルリオーズ
    • ノクターン第2番 - F.F.ショパン
    • 「ペトラルカの三つの歌」より「地上の天使を見た」 - F.リスト
    • 雨だれの前奏曲 - F.F.ショパン
    • 歌曲集「ミルテの花」より「献呈」 - R.A.シューマン
  • アンコール
    • アヴェ・マリア - J.S.バッハ / C.F.グノー

「樹木の陰で」というと「?」と思う人でも、「オンブラ・マイ・フ」と聞けば「ああ、あれか」とわかるでしょう。また、ショパンの曲の演奏はどれもよかったですが、「雨だれ」はとりわけ感情移入させられました。ただ、第一部はムービー撮影していたのですが、演奏中に機器を操作する音が時折耳について、ちょっと集中できず……。

この日の「コラボ」の一方の主役、フランス菓子。口にしたときには「この上品な甘味は……和三盆か?」とワケのわからない感想を抱きましたが、実際には手前は小麦粉・蜂蜜・各種香料で作られるパン・デピスという、古代から伝わるお菓子で、もう一つはショパンの愛人ジョルジュ・サンドが書き遺したというレシピに沿って作られたケーキ。お菓子の歴史のレクチャーもあって、特に16世紀以降、ヨーロッパの王家間の婚姻によってイタリア(カトリーヌ・ド・メディシス)やオーストリア(マリー・アントワネット)の菓子文化がフランスに導入されたことが強調されていました。

こちらはピアノの歴史について講義するありか先生先生。手にしているのは古楽譜。かつて張力が稼げない木のフレームの時代(ex.1859年パリ博)に434HzだったA音が、鋳物のフレームになり、演奏の場所もホールになってきらびやかな音を求められるようになった結果、徐々にピッチが上がってきて現在では440〜442Hzが一般的になっているというお話。しかし、本日の真の主役はプレイエル社製のピアノでした。85鍵と小さく、運搬に便利に作られているのだとか。ベースギターの音は聴き分けられてもピアノの音にはとんと疎い私ですが、その私の耳にもコロコロとかわいい音でした。チューニングはA=442Hz。

ピアノ調律師の本領発揮中のありか先生先生。見掛けによらず腕っ節強し。壊さないようにお願いします!そして、畳むとこんなふうになります。まるで箪笥のよう。船に載せるのにいいんだとか。

小さな会場での2時間ほどの小さなイベントでしたが、単に音楽を聞かせるだけではなく、いろいろなものを参加者に伝えたいという主催者側の気持ちのこもった、楽しい企画でした。しかし、当日配られたしおりの最後に書いてあるありか先生の肩書きを見ると「日本調律師協会会員・国立音楽大学研究会会員・スタインウェイ会会員・コルグ消音ユニット取付認定技術」とあります。うーん、最後のがいまいちよくわからないけど、なんか偉い人みたいだな。