徘徊

2012/10/21

この土日、八ヶ岳への行き帰りの車中で鑑賞したのが、上原ひろみがAnthony Jackson、Simon Phillipsと組んだThe Trio Projectによる『LIVE IN MARCIAC』です。

これはこの3人による2011年の作品『VOICE』に収録された曲を中心としたライブ映像で、南フランスのマルシアックでの演奏の模様がメイン。ベースとドラムの2人の名前を知らない人はいないと思いますが、この名手2人と組んでの期待に違わない堂々たる演奏が繰り広げられています。エネルギッシュ、ときにコケティッシュ。そして何といっても、プロフェッショナル。

特典映像としてヨーロッパ5カ国をまわるツアーの様子が収録されているのですが、こちらでは相変わらずのSimon Phillipsの茶目っ気と、夜中にティラミスを求めて街を徘徊する上原ひろみのミーハーな表情が捉えられていて、これまた魅力的。クラシック用の演奏会場だったり、ロック風のオールスタンディングだったりと行く先々の環境は異なり、調律師とのやりとりや指定外の機材(シンセサイザー)と格闘しなければならなかったりとアクシデントも無いわけではないのですが、自分で自分の立ち位置を決めつけず、どんな環境でも受け入れてベストの音楽を紡ぎ出そうとする彼女のポジティブさが伝わってきます。

そのポジティブさがそのまま音楽に現れたような演奏が、こちら。このThe Trio Projectでの2作目『MOVE』からのタイトルナンバーです。ブルーノート東京でのこの公演、私もチケットをゲットしようと試みたのですがまるでダメでした。しかし、これほどの演奏が繰り広げられていたとは!何度聴いても胸が熱くなってくるほど。じかに見聞きすることができなかったことが、返す返すも残念です。

ピアノソロパートの最終盤にいつの間にか滑り込んでいる強力なツーバス連打、ドラムソロパートからキメのフレーズへ戻る際のアイコンタクト(上原ひろみがSimonに目配せ)など、ぞくぞくする場面が随所に現れます。そして、すさまじい変拍子の嵐はもはやプログレの世界!そういえば彼女は、Frank ZappaやKing Crimsonが好きなんだそうです。