邯鄲

2012/10/23

定期購読している能楽専門誌『花もよ』の第4号に、なぜか唐突にCDが付いてきました。なんと、「昭和の世阿弥」とまで呼ばれた早世の天才・観世寿夫師の『邯鄲』の録音が発掘されたもので、1959年にアメリカでのみ発売されたLPレコードをデジタル化したものなのだそうです。まさにサプライズです。

シテ 観世寿夫
ワキ 宝生弥一
アイ 野村万作
地頭 観世静夫
寺井政数
小鼓 三須錦吾
大鼓 安福春雄
太鼓 観世元信

たとえばこの〈次第〉憂き世の旅に迷い来て、夢路をいつと定めんで聞かれる滋味豊かな謡は、録音当時34歳とは思えない落ち着いたもの。しかし、続く地取リの声の方がむしろクリアに聞こえることから、マイクは地謡の近くにあったことがわかります。寿夫師は53歳で亡くなってしまいましたが、もし生き続けていたとしたら今は86歳で、さすがに一線で活躍できていたかどうかは微妙ながら、それでも一目姿を見てみたかったような気がします。