八丁
2018/11/08
長いこと山歩きをしていると、あちこちでネットつながりの人たちと出会ったり私のサイトを見ている人から声を掛けられたりということが起こり、そのたびに「山の世界は狭い」と思うのですが、登山関連のホームページやブログを持っているサイトオーナーたちのネット社会もやはり狭いというお話。
先日、小川山の近くにある岩稜「野猿返し」を登ったのですが、その記録を整理するにあたって同ルートの再整備者である松原尚之ガイドのブログ「山について語るときに僕の語ること」を参照するついでにその前後の記事をいろいろ読んでいたところ、松原ガイドが甲斐駒ヶ岳の日向八丁尾根を登ったときの記事が目に止まりました。
この中で私が注目したのは、次のくだりです。
日向八丁尾根(正式には、大岩山から先の尾根は八丁尾根といいます)は、よく整備され、迷うようなところや、藪漕ぎで難渋するようなところはありませんでした。
日向八丁尾根は私も9月に歩いたところなのですが、そのときは烏帽子岳から日向山までの一つながりをまとめて「日向八丁尾根」だと認識しており、そのようにレポートも書いていました。しかしそれは正確ではないのか?これは調べてみなくては。
いろいろと検索してみたところ、こちらのサイトの中で引用されている東京白稜会の会員・恩田善雄氏の記述がどうやら参考になりそうです。
日向八丁とは本来、烏帽子岳から大岩山南鞍部までを指し、大岩山から東は日向尾根、あるいは大岩山尾根などとも呼ばれていたが、最近では烏帽子岳からの尾根全体を指して、日向八丁尾根と呼ぶ場合が多いようである。
ここでは烏帽子岳〜大岩山間の呼称は松原ガイドが記している「八丁尾根」ではなく「日向八丁」だと記していますが、ともあれこの区間が独立した名称を持っているらしいこと、そしてその地名研究が恩田善雄氏の著作としてまとまったかたちになっているらしいことを知ることができたのは収穫でした。
ところで、この緑色のサイトのタイトルは「山こじ通信」ですが、はて、どこかで聞いたことがあるような……と少し考え込んで、はたと思い出しました。
登山記録サイト「やっぱり山が好き!」のオーナーであるsudoさんとは10年以上前から時々ネット上で会話させていただいているのですが、先ほどの緑のホームページは「やっぱり山が好き!」の掲示板に活発に書き込んでおられる「山こじ」さんその人のサイトでした。まさかこんなかたちで山こじさんのサイトを拝見することになるとは。
さて、ここまで辿り着くと今度は恩田善雄氏の本を読んでみたくなってきます。東京白稜会は、赤石沢奥壁Aフランケの初登ルートである「白稜会ルート」に名前を残しているように甲斐駒ヶ岳に精力を集中させていた山岳会ですが、恩田善雄氏はその主力メンバーとして多数の研究成果や記録をものした方らしく、その中心的な著作らしい『南アルプス甲斐駒ヶ岳-わたしの覚え書き』等がどういうわけか白州市のワイナリーであるシャルマンワインに併設された「甲斐駒ヶ岳資料館」に収蔵されているということがわかりました。
これはぜひとも足を運んでみたい(もちろんワインも飲んでみたい)と思いつつ、今度はこの「甲斐駒ヶ岳資料館」やそこに蓄えられた資料類をどのようなかたちで読むことができるのか知りたくなり検索を重ねてみたところ、やはりこの資料館を訪れた記録が見つかりました。
なるほど、さすがに貴重な本そのものを手にとることはできないようですが、その代わりコピーを閲覧することができるそうです。地名だけでなく、この一帯に分布する石仏や石碑など宗教的なモニュメントの背景についても学習できるかもしれません。
そして、ここでもまた「!」と思うことになりました。この資料館訪問のレポートが掲載されているブログ「日々のぜいぜい」のオーナーであるぜいぜいさんは、直接お目にかかったことはないものの、私のツイッターをフォローしてくださっていて(ありがとうございます)、ご自身のツイッターでも山で撮ってきたすてきな写真などを活発にアップされている方です。
なにやら、広大なネットの海を航海しているつもりが実はお釈迦様の手の平の中に閉じ込められていた、といった趣きですが、直接間接にゆかりのある方々に助けていただいて信頼するに足りる情報を手にいれることができて、これはこれで悪い気はしません。