生虹

2019/03/17

Queenの音楽を初めて聴いたのは、ラジオで洋楽を聴くようになった高校生の頃。当時さかんにオンエアされていた「Killer Queen」に「なんだかヘンな曲だなぁ」という感想を持ちながらもそのコーラスが強く印象に残ったことを覚えています。

その後、20台後半の頃のパートナーがなぜか筋金入りのQueenファンで、まずはこれからだと聴かされたのはセカンドアルバム『Queen II』。渋い、渋すぎる。

時は流れ、昨年の映画『ボヘミアン・ラプソディ』の大ヒットでQueenブームが再来しましたが、今回購入したDVD『Live at the Rainbow ’74』は、映画のクライマックスを飾ったライブ・エイドや、その後のラストライブとなったウェンブリーでの洗練されたパフォーマンスとは異なり、サードアルバム『Sheer Heart Attack』の曲を中心とする原初的なQueenのステージを収めたものです。

とにかくこれは凄い。何が凄いかと言うと、まだアルバムデビューの翌年であるにもかかわらず、極めて高度な演奏力を駆使した完璧なステージングであることです。しかもメンバーそれぞれの個性がバンドの個性に昇華しており、Queenを映画で知った後付けのファンが聴いても、これはQueen以外の何者でもないと認識できるでしょう。それでも、MCの中で「チャートが上がって(=レコードが売れて)うれしい」的なコメントが入るあたりは、まだビッグネームになりきる前のバンドの率直な心情を窺わせます。また、部分的にギターのチューニングの不安定さが目立つ点にも、この時代の生々しいライブ感を見てとれます。

曲調はそれなりに多彩ですが、全体を通してハードロックバンドとしての色彩が顕著。Brian Mayによるギターのリフを中心に組み立てられた楽曲が多く、そこにFreddy MercuryのピアノやRoger TaylerとJohn Deaconのリズム隊が絡み、Queenのトレードマークである高音のコーラスも多用されています。ことに驚いたのはJohn Deaconで、彼がロックベーシストとしてここまで優秀だったとは、このDVDを見るまで気付いていませんでした。ブリッジ近くの弦の下にミュート用のスポンジを噛ませたFender Precisionを駆使してステージ上を歩き回る姿には、風格すら感じます。

Freddy Mercuryもまた、1980年代の映像に見られるマッチョで親しみやすいキャラクターではなく、一種神がかったオーラをもったカリスマとしてステージ上に君臨しており、その歌唱はこの時点で完成の域に達しています。どの曲でも彼の素晴らしいパフォーマンスを聴くことができますが、ことに特筆すべきものとしては、マシンガンのような疾走感で言葉を繰り出す「Stone Cold Crazy」とボーナストラック(Queen II Tour)の「Son and Daughter」を挙げておくことにします。

「We Will Rock You」も「We Are the Champions」も含まれていないセットリスト(これらの曲は1977年の『News of the World』収録)ですが、それでもこれぞQueenです。あまりに良かったので、上述の元パートナーにも、最近のブームに言及しつつこのDVDをAmazon経由でプレゼントしたところ、次のリアクション。

懐かしいですねえ。
映画はIMAXで2回見ました。
ブーム再来で、参ったか、と言う感じです。ふふん。

ふふんって、アナタ……。