山行

2019/05/23

かつて毎週のように一緒にボルダリングジムに行っていたボル友Y女史とは、近年は自分がボルダリングから離れてしまったために顔を合わせる機会がすっかりなくなってしまいましたが、それでも年に一度は近況報告会と称する飲み会を荻窪で行っています。

今日はその近況報告会の日。少し早く荻窪駅に着いたので、商店街の中でたまたま目に止まった古書店に入ってみました。通りに面したところには白土三平の『忍者武芸帳 影丸伝』全巻セットが置かれていたのでそういう傾向なのかなと思ったのですが、中に足を踏み入れると人文系のかなり硬派な書籍が棚を埋め尽くしていて、背表紙を眺めているだけでもアカデミックな気分に浸れます。その棚を手前から奥へ見て回って、店主の席を前を通って反対側の棚に達すると、そこには山岳関係の古書群が並んでいてびっくりしました。

中でも目についたのが、槙有恒の『山行』です。もとは大正12年発行の書籍で、さすがにそれがそのまま残っていたわけではなく、日本山岳会創立70周年記念出版として昭和50年に復刻されたものでしたが、ほぼ新品同様の状態で800円は安い。

この本が気になったのはもちろん、槙有恒がアイガー東山稜(ミッテルレギ稜)の初登者だからですが、手にとって開いてみるとやはり「アイガー東山稜の初登攀」なる章が含まれていました。ちなみに、目次の全体像はこんな感じです。

  1. 山と或る男
  2. アルペンに於ける登山の發達
  3. 登高記
    1. ヴェッターホルン
    2. メンヒよりアイガーへの縦走
    3. フィンスターアール,ホルンよりグロッセシュレックホルンへ
    4. マッターホルン
    5. アイガー東山稜の初登攀
  4. 南側よりのアルペン
  5. 山村の人と四季
  6. 板倉勝宣君の死
  7. 岩登りに就いて

アイガーの東山稜は私も2013年に登っていますが、その際に泊まったミッテルレギヒュッテに備え付けられていたアイガー登山史の本に「Yuko Maki」の名前が記されているのを読んでいたので、この記録を読むのが楽しみです。

肝心の近況報告会は、荻窪駅から徒歩10分ほどのビストロ「ナトワ」でワイン片手にヘルシーメニューをおいしくいただきつつ、クライミングのことや仕事のこと、さらには住まいのことや家族のことなど、あれやこれやと話し込みました。考えてみれば、Y女史と知合いになってからもう既に20年以上。今やお互いに相当の年輪を重ねてきているので、1年ぶりともなれば身辺にもいろいろ変化があるものです。それでも、2人とも健康に恵まれて好きなクライミングができているだけでもありがたいことだなと、Y女史と語らい合いながらしみじみ思いました。