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1999/12/11

つれづれなるままに週刊アスキー(1999/12/15号)を眺めていたところ、あるコーナーにDLJディレクトSFG証券の記事が載っていました。

同社は日本で最も早く発足したオンライントレード証券会社として紹介されていたわけですが、2ページにわたってインタビューに応じている代表取締役のお名前が国重惇史氏。「国重?どこかで聞いたことがあるような……」と読み進めてみると、同氏の発言の中に住友銀行の日本橋支店長の頃インターネット関連企業に融資をして随分こげつきも出した、というくだりがあってやっと思い出しました。

ブラウザとの連動で画面常駐型の広告を掲示する「ハイパーシステム」を1996年に開発し、アスキーの無料接続サービスのバックボーンとなりながら、そのアスキーとの確執や銀行の融資引き上げの中で1997年12月にあえなく倒産した株式会社ハイパーネットの元社長・板倉雄一郎氏が、その創業から倒産までの過程を赤裸々につづった著書であり、その内容の身近さと面白さに寝る時間も削って読みふけった本=『社長失格』、この中でハイパーネットの事業の急拡大と金融収縮の両面でキーマンとなった人物として登場するのが、住友銀行日本橋支店長(当時)だった国重氏です。

週刊アスキーの記事をさらに読みすすめると、国重氏はハイパーネットのことに直接言及しており、ハイパーネットが広告掲載企業から取る広告料をワンクリックいくらではなく定額制にしてしまったため、収入は一定なのにアスキーの会員増に応じてハイパーネットがアスキーに払うコストが増えるという構造的な収支のアンバランスが倒産の原因、と分析していました。

ハイパーネット倒産の真の理由については、銀行側と板倉氏との間でおそらく見解の相違があるものと思いますが、ともかく夢中になって読んだ本の登場人物の消息に意外なところで接したことに、訳もなく深い感慨を覚えたのでした。