記憶

2000/02/07

水曜日に会社からの帰りに立ち寄った書店でふと手にとった『ベーリンジアの記憶』(星川淳)を、金曜日の夜から土曜日の朝にかけて一気に読みました。

ベーリンジアというのは、最終氷河期の終わり、まだベーリング地方がアジアと北米をつないでいた頃のその陸橋をさします。物語は、今から1万4000年前、カムチャッカ半島の根元の村に育った少女ユカナが、封印された「地の橋」を越えて東の国へ向かい戻らなかった父の後を追って、自らもベーリンジアを渡っていく冒険を、現代のアラスカの地で「夢見」によって追体験することになった日本人女性の目を通してファンタジックに描いたものです。

北の大地の雄大で厳しい自然の描写や、後に南北アメリカ大陸に広がるモンゴロイドの祖先への遠い記憶が、ストーリーの面白さとともにこの物語の魅力ですが、表紙に使われた星野道夫の写真も読む者の心をはるか昔の北の大地に連れて行ってくれます。いつか、ベーリング海を見下ろすこの写真の地を本当に訪れたいと強く感じました。