虚実
2000/04/07
花粉症だか風邪だかその両方だかわからない症状に、薬を服まなければ頭が働かないし、服んだら眠いしで、結局どちらに転んでも生産性が低いここ2週間。ほうほうの体で帰宅する途中で読みすすめたのが『シリコン・ヴァレー物語』(枝川公一)。一応自分も業界人の端くれなので(と言っておきます)、シリコン・バレーでの立志伝の数々はいろいろと見聞する機会がありましたが、たまたま書店で手にとったこの本がコンパクトにまとまっていて面白そうだったので買い求めました。ちなみにここのところ新書にこだわっているのは、何よりコートのポケットにすとんと納まるサイズがお気に入りだからですが、もうコートの季節は過ぎたのでそのメリットはこの1冊で終わり。
この本は1885年のスタンフォード大学創設を前史として、デイヴィド・パッカードとウィリアム・ヒューレット(HP)、ロバート・ノイスとゴードン・ムーア(インテル)、スティーヴ・ウォズニアックとスティーヴ・ジョブズ(アップル)、ラリー・エリソン(オラクル)、スコット・マクニーリ(サン・マイクロシステムズ)といったよくよくお馴染みの人物の起業の様子を語るものです。シリコン・バレーと呼ばれるカリフォルニアの一地域の1985年までの期間に絞り込んだ描写であるため、インターネットについての記述はほとんどありませんし、またビッグ・ブルーことIBMやマイクロソフトも、カウンター・カルチャーとしてのシリコン・バレーの特徴を際立たせるための存在として取り上げられるにすぎません。しかし、この本の目的は企業興亡史を丹念に描くことではなく、この地に横溢する、技術至上主義で自由と夢とリスクに満ちあふれた文化をつかみとることにあるので、それはそれでかまわないわけです。
本書の中にはシリコン・バレー・ウェイとでも言うべき行動や発想に基づく面白いエピソードや警句がふんだんに盛り込まれていますが、次の一節には考え込まされました。
シリコン・ヴァレーで、ときに人は未来を現在であるかのように語り、また、過去を現在に合わせて修正しようとする。それは、自分を正当化し、最大限の可能性を提示したいからである。したがって、虚実の間に明確な境界線を弾けないことがしばしばある。しかも、時を経れば、ヴィジョンが現実になり、大言壮語と聞こえたことが、立派に実現している。
後段のしかも
以下があるとないとでは大違いで、プランを現実のものとすることができた人間は成功者となりますが、そうでない者はただの嘘つきに成り下がるわけです。なにもこれはシリコン・バレーに限った話ではなく、この3年間に自分のごく身近で起こり、現在もなお余塵がくすぶり続けている事象を眺めてみても、この一文の重みがずしりと響いてきます。
さて、ここで問題です。以下に並べる言葉は本書に直接 / 間接にとりあげられた企業の社名の由来ですが、その企業名がわかるでしょうか?答を導き出すのは難しくないと思いますが、へ〜こういう由来があったのかと驚くものが含まれているかもしれません。どうしてもわからないときは、その言葉をクリックすると正解となる企業のホームページへ飛んで行けます。なお、めでたく全問正解しても何も出ないのであしからず。