委調

2000/06/17

労働省に勤務していた頃の同僚で、当時、民間からの委嘱調査員として出向してきていた加藤氏(現在は某シンクタンクのコンサルタント)から久しぶりにメールが届き、彼のバンド「アンチテーゼ」がライブをやるから来い、とのお達し。加藤氏から連想するイメージは「麻雀」「歌舞伎町」ついで「火曜サスペンス」ですが、ミュージシャンとしてもキャリアは十分です。もちろん二つ返事で聴きに行くとリプライしました。

雨模様の東中野の駅から歩いて3分程のライブ・スポット「King Bee」の狭い階段を、とんとんと地下へ降りると受付に懐かしい加藤氏が立って次々に接客しています。相変わらず愛想のいい人だな。再会を喜んでからバドワイザーの缶を買って勧められるままにくじを引くと何とTシャツが当たってしまいました。う〜む、いい店だ。店内にはだいたい同年代(30代後半から40代)とおぼしき観客が20名程度。開演時刻を回る頃にはその倍くらいにはなったかな? 5分程遅れてBGMが消え、メンバーが楽器の前に座ります。左から順に、ピアノ / リコーダー / コーラスの加藤氏、アコギ / ベース / ボーカルの杉浦氏、ドラム / パーカッション / マンドリンの辻氏です。

全体は二部構成になっており、第一部はアコースティックセット、第二部がロックセットのようです。以下、こんな感じで進みました(括弧内はその曲での楽器編成)。

夢の花びらが割れていくように(p/ag/perc)
ちょっと重い歌詞の曲。サビのフレーズは一度聴けば記憶に深く残る感じ。アコギのソロあり。この曲の後に、アンチテーゼの営業部長・加藤氏のMCが入ります。曲だけなら40分のところをMCで水増ししてなんとか引き延ばします、と悲壮な決意を披露します。がんばれ。
希望の香り、悲しい感じ(p/ag/perc)
なんだか懐かしい感じの曲。ピアノのイントロとサビのコーラスが印象的。
観覧車の巣(recorder,p/ag/mandolin)
おもむろに加藤氏がピアノの上のリコーダーを袋から取り出します。う〜む、どうしてあらかじめ袋から出しておかなかったんでしょう。しかも、曲が終わったらまた袋に戻す律儀さは尋常ではありません。この曲の後に制作部長・杉浦氏のMCが入ります。拍手が多いのは、彼の友人が多いからかな?次の曲の背景を説明せよ、との指示にしたがって彼の生い立ちから環境問題、はては人生論まで風呂敷を広げた長い語りに、最初は神妙に聞いていた聴衆もだんだんあきれてしまいます。
バス通り(p/ag/mandolin)
アコギはコード・カッティング、ピアノのバッキングが力強く、マンドリンのフレーズが効果的。後半に不思議なスケールが現れるあたりはちょっとひねってあります。
つま先だけが風邪をひいた(p/ag/ds)
はじめてドラムが参加、ただしブラシ。アコギのイントロで静かに始まり、徐々に盛り上がってアコギのソロ、ピアノの気合の入ったグリスなどがあり、とても感動的な曲です。この曲が終わったところでいったん休憩に入りました。

ビートを刻んでいた(p/b/ds)
この曲と1曲目の曲は、以前私が京都に住んでいたときに我が家に泊まっていった加藤氏から借りたテープで聴いたことがあって、懐かしいものがあります。杉浦氏が肩にかけたベースは、ヘッドに渦巻き型の彫り模様があり、ボディはfホールつきのセミアコタイプと、あまり見掛けないもの。この曲の後のMCでは、加藤氏が近頃腹の立つこと、というお題で次々に「あー、あるある!」という体験をしゃべり、杉浦氏と掛け合います。その後ろで寡黙な辻氏がひっそりとハイハットの不具合を直しているのがなんだか笑えます。
くずれそうに爽やかなこの場所で(p/b/ds)
ドラムのフィルから入るこの曲もタイトルが妙に冗長。それはともかく、この曲のベースはけっこう難しいのではないでしょうか。ドラムのパターンからははっきりとしませんが、ボーカルはシャッフルのリズムを感じていて、しかもベースは高めのポジションで二拍三連っぽいタイムでフレージングするところがあって、一種ポリリズムのような感じがします。
切り花〜翻す季節(p/b/ds)
2曲メドレー。「切り花」はBen Folds Fiveっぽいピアノのハードさを表に出した曲。「翻す季節」は加藤氏のコーラスがうまい!
果実の重さ(p/b/ds)
第二部もめでたく終了。ここでアンコールの拍手が鳴り響き、楽屋(?)に引っ込んでいた3人が期待に応えて再び登場しました。
でも激しい何かが(p/ag/tambourine)
以前のライブではアンコール曲を用意していなかったため非難ごうごうだったということで、ちゃんと用意されていた曲。最初にPAさんに使用マイクの指示をしてから演奏に入ります。これまた、とてもいい曲です。これでストリングスがバックに入っていたら感涙ものだろうな、と思いました。

演奏は8時半に終了。全体に懐かしい曲調で、メロディも印象的だし、楽器も3人編成なのに空間を適度に埋めていて、コーラスもばっちり(さすが加藤氏!)、言うことなしです。それにPAさんがいいのか、全体の音のバランスもよくて(ドラムがちょっと控えめにしか叩けなかったのが唯一の難点?)安心して聴けた、いいライブでした。やっぱり、どんなジャンルの音楽も生身で弾くのを見て、聴くのが一番です。