二人

2000/09/25

前から気になっていたGenesisの『Wind and Wuthering』(邦題『静寂の嵐』)を購入。本作は、名作の誉れ高い『The Lambs Lies Down on Broadway』(邦題『眩惑のブロードウェイ』)を最後にPeter GabrielがGenesisを脱退してからドラマーのPhil Collinsをメイン・ボーカルに起用して再出発した『A Trick of the Tail』に続く作品(1977年)であり、ギタリストのSteve Hackettが参加した最後の作品でもあります。

この作品が気になっていた理由は、このアルバムに含まれている「In That Quiet Earth」という曲にあります。この曲のライブバージョンを私はGenesisのステージとSteve Hackettのソロ公演の2種類聴いている(LDでも生でも)のですが、同じタイトルなのに全く違う曲なのが不思議でなりませんでした。Genesisのライブの場合は、「In the Cage」から始まるOld Song Medleyの中で、「Cinema Show」の長い高速シンセ・ソロに続いて、重たい4拍子の上にシンクラビアの音圧の高い空間を切り裂くような音色で緊迫感に満ちたスケール上でのゆったりしたソロが展開しているのに対し、Steve Hackettの場合は軽快なトリプレットが続く3拍子の曲で、彼ならではのサステインが効いたギターのこの上なく美しいフレーズを中心に曲が組み立てられています。

この違いの秘密は、しかし『Wind and Wuthering』を聴くことでいとも簡単に解決しました。要するに「In That Quiet Earth」はもともとギター中心の前半部とシンセサイザー中心の後半部が接続された二部構成の曲になっており、キーボード・プレイヤーのTony Banksを擁するGenesisのライブでは後半部、Steve Hackettのライブでは前半部が独立した曲として演奏されていたのでした。クレジットを見るとこの曲はSteve、Tony、Phil及びベーシストのMike Rutherfordの4人の共作ということになっていますが、もしかするとSteveとTonyの2人がそれぞれ持ち寄ったマテリアルを合体させて曲ができたのかもしれません。Steveがスタジオ盤としては本作を最後としてGenesisを脱退し、以後ソロ作品の中で自由な曲づくりを追求していったことを考えあわせても、ライブでの二つのバージョンの「In That Quiet Earth」は曲の成り立ちをあらわしているように思えて改めて興味深いものがあります。

で、ついでというと怒られるかもしれませんが、パフィーのベスト『The Very Best of Puffy amiyumi jet fever』も買ってしまいました。最初はシンガーとしての2人というより、奥田民生を中心とする「チーム・パフィー」の職人芸を聴くという感じだったのですが、しかし、聴き込んでみると多彩なボーカル・スタイルが曲ごとに使い分けられていて、意外に彼女たちの歌唱力も侮れません。それにしても、「アジアの純真」のシンセによるコード連打とタイトなリズムには、初めてこの曲を聴いたときの驚愕がそのまま蘇り、再びノックアウトされました。