尻取

2000/11/25

先日、高校時代の恩師からメールをいただきました。

恩師は明朗な声と気さくな人柄で生徒たちに人気の先生で、世界史の授業を担当されるとともに、私が属していたチェス部の顧問を(チェスを指せないにもかかわらず!)務めておられました。その後早稲田大学の講師から愛知県立大学に転じられ、女学生たちに囲まれながら「近現代のロシア史及び日本とロシアの関係史」を教えておられるこの恩師からのメールは、かつての教え子たちに御自分が主宰されている「おろしゃ会」の近況を知らせるものでしたが、同時に人文・社会科学書を中心に刊行している成文社のホームページのリレーエッセイに寄稿されていることも書いてあり、早速読んでみて驚いてしまいました。このエッセイの中に、先生が子供の頃に知人から「ロシアを揶揄する尻取り歌」の替え歌でからかわれたという記述があるのですが、この尻取り歌を、歌詞は若干違いますが私も知っており、しかもつい最近その歌のことを思い出していたところだったのです。

実は先日、私の勤務している会社で社員向けにあるアンケートが実施されたのですが、その自由記述欄に「バカチョンという言葉は朝鮮に対する差別的表現で好ましくない」と書いた者がいました。私はそのような事実を知らなかったので早速ネット検索してみたところ、この言葉が差別問題のみならず放送・出版上の用語規制との関連であちこちで議論されていることを知りました(ただし「バカチョンカメラ」という場合の原義は「バカでもチョンと押せば撮れるカメラ」だそうです)。そうした記述を読んでいるうちにふと思い出したのが、私がまだ小学校に上がってもいない頃に母から教えられた以下の尻取り歌でした。

スズメ〜メジロ〜ロシヤ〜ヤマンゴク〜クロパトキン〜金の玉〜負けて逃げるはチャンチャンボウ〜棒で殴るは犬殺し〜死んでも命があるように〜日本の〜乃木さんが〜凱旋す〜スズメ……

チャンチャンボウの方は中国人に対する蔑称であり、今にして思えばずいぶん不穏当かつ不適切な言葉ではあります。後半の歌詞もかなりシュールで、ナイーブな子供なら怯えてしまうのではないかと思えますが、しかし内容からすると日露戦争の頃の歌に違いなく、母は昭和10年の生まれなのできっと母の母の、そのまた母から受け継がれてきた歌なのでしょう。ついでに「ヤマンゴク」と覚えていた歌詞が「野蛮国」であることも先生のエッセイでわかり、35年ぶりに誤りが正されました。

もっとも、正しい歌詞がわかったからといってこれを積極的に次の世代に伝えていこう、とは思えないのですが……。