頭痛

2000/12/23

Rushのベーシスト / ボーカリストであるGeddy Leeのソロ作『My Favorite Headache』が最近のお気に入り。ここのところ、自宅でiMacに向かうときには必ずこれをCD-ROMに入れてBGMとして流しています。

Rushは私が20年以上にわたって聴き続けているカナダのロックグループで、ギター / ベース / ドラムの3人構成ながら極めて複雑なリズム・アレンジと恐ろしく高度な演奏力で独自の地位を築き上げており、Dream Theaterなども自らRushの影響を受けたと公言しているほどですが、数年前に、ドラマーのNeil Peartの家族に相次いで不幸が訪れてから活動を停止し、ファンをやきもきさせていました。Rushの活動再開は2001年からとアナウンスされていますが、それに先立ってリリースされたのが本作というわけです。

本作は、ベース / ボーカルのGeddy Leeに、ギターのBen Mink(かつてRushの『Signals』にヴァイオリニストとしてゲスト参加)、ドラムのMatt Cameron(1曲だけJeremy Taggart)というRushと同じパワートリオのバンドスタイルとなっていますが、ここでのGeddy Leeは、ハイテク・ベーシストとしてではなく有能なコンポーザー / ボーカリストとして音楽全体を掌握しているという感じで、大向こうを唸らせるようなケレン味はないものの、聞き込むほどに一つ一つの楽曲の魅力が伝わってきます。オープニングの「My Favorite Headache」からRushファン好みのテンションの高い曲が続きますが、むしろ後半の伸びやかな楽曲群の方がスムーズに聴き手の心に届いてくる感じで、ユーモラスながらテクニックもしっかり聞かせる軽快なロックンロールの「Home on the Strange」やGeddyによるピアノのイントロが印象的な「Slipping」、Rushではまず聴くことができないつぶやくようなボーカルスタイルとファルセットが優しい「Still」と続き、最後の「Grace To Grace」はそのままRushのフォーマットに置き換えてもおかしくないほど完成度が高いナンバーになっています。

全体を通して、Geddy Leeのコンポーザーとしての良質の部分がリラックスした雰囲気の中で形にされていった作品、との印象をもちました。Rushファンにとっては、彼の「あの」ボーカルが聴けるという以上のうれしい驚きを受け取ることができるはずです。