腐縁

John Wetton『Welcome to Heaven』

2001/02/17

元King Crimson、U.K.、Asiaのベーシスト / ボーカリストであるJohn Wettonのソロ作『Welcome To Heaven』を聴きました。ソロ作としては1994年の『Voice Mail』、1997年の『Arkangel』と三部作をなす作品で、CDの帯に書かれたキャッチコピーによるとロック・シーン不世出の巨星、ジョン・ウェットン。大いなる感動に満ちた『アークエンジェル』以来約3年半振りとなる、威風堂々のニューアルバムここに完成なんだそうな。

私の見るところ、1970年代におけるKing CrimsonのベーシストとしてのJohn Wettonのプレイは今でも鳥肌が立つほど凄いと思っていますが、U.K.やAsiaでの彼はキャッチーなメロディを巧みに生産するボーカリスト / コンポーザーとしての役割にウェイトがあり、ソロ作に至ってはベーシストとしてのアイデンティティーは希薄。それはこの作品の各曲にクレジットされた楽器構成を見ても明らかで、Robert Fripp及びIan MacDonaldとの共演がプログレ関係者の注目を集めた「E-SCAPE」ではベースではなくキーボードを弾いていますし、Steve Hackettが(ギターではなくハーモニカで)参加した「Real World」でのJohnはアコースティック12弦ギターを弾いており、他にもベースレスの曲や打ち込みによる曲などもあるくらい。まぁこの点へのこだわりを捨てれば『Welcome To Heaven』は決して悪い出来というわけではなく、手慣れたいい仕事をしているなと思える作品ではあるのですが、楽曲があまりにも予定調和で新鮮な驚きが得られないし、歌詞は相もかわらずワンパターンのラブソング。もう少し工夫が欲しいところ。

しかしこれだけけなしていても、彼が新作を発表すれば即座に購入し、来日したら律儀にライブ会場に足を運ぶのは、我ながら腐れ縁だからとしか説明のしようがありません。今年も春からヨーロッパ、アメリカを回って秋には来日する可能性があるそうですが、「仕方ないな……」とため息をつきながらチケットを購入することになるでしょう。

ところで、このCDの日本語版解説を読んでいてふと気付いたのですが、各曲の邦題がことごとく原題をカタカナに直しただけ。かつての「洋楽」(死語)には気の効いた邦題がついていてそれが曲のイメージをさらに膨らませる役目も果たしていたものですが、日本側販売元が邦題を考えるのも面倒と思ったのか、凝った邦題をつけるのはもうはやらないのか、どちらなのでしょうか(ただし邦題をつければいいというものでもなく、例えばAsiaの「嘘りの微笑み」(原題”The Smile Has Left Your Eyes”)なんていう妙な訳もありました。なぜ「偽り」でなく「嘘り」なのかまったく不明)。

さてここで問題です。下記の英文タイトルは、4大プログレバンドと称されることもある(上から順に)Emerson, Lake &Palmer、King Crimson、Pink Floyd、Yesのいずれも記念碑的作品のタイトルですが、それぞれ実に印象的で、しかしながら「どうやったらこの訳を捻り出せるんだか」という邦題がついています。それぞれを正しく組み合わせてみてください。

原題

(1) Brain Salad Surgery
(2) Lark’s Tongues In Aspic
(3) Dark Side of the Moon
(4) Close to the Edge

邦題
(a) 危機
(b) 狂気
(c) 恐怖の頭脳改革
(d) 太陽と戦慄

Yes『Close to the Edge』King Crimson『Lark's Tongues in Aspic』

【正解】もちろん、(1)-(c)、(2)-(d)、(3)-(b)、(4)-(a)。

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