真実

2001/12/26

ジェフリー・S・ヤング著『シスコの真実』を読みました。

サブタイトルに「シリコンバレー『超』優良企業の光と影」とあり、また原題が「CISCO Unauthorized」とあるように、この著作はネットワーク機器業界の巨人であるシスコシステムズの史上例をみない程の急成長の背景にある顧客至上主義(技術至上主義ではなく)、企業買収で製品ラインナップの広野を席巻していく成長モデルの危うさを次々に指摘していきます。しかし、対抗馬として名乗りを受ける通信機器の名門ルーセントは戦線を離脱し、光の申し子ノーテルもまた足踏みを続け、シスコシステムズの独走は依然続いています。シスコのビジネスモデルに対して、著者はときに皮肉に、ときにあからさまに批判の目を向けながら、しかしシスコのこれまで成し遂げてきていることに対して、不思議な無力感を抱いているようにも読めます。

本書の中に描かれていたシスコやルーセントによる無謀ともいえる企業買収の嵐は、私の勤め先の主要商品であったリモートアクセスサーバ(PortMaster)や侵入検知システム(NetRanger)の調達政策に極めて大きな影響を及ぼした出来事だったこともあって、当時を思い返しながら興味深く読みましたが、ただ、そうした個別事象を別にすれば、本書のもったいぶった文体(訳者の責任ではありません)と中身の希薄さ(上述の内容に390ページもかける必要性は乏しい)は、正直に言って本書を読み進めることを辛いものにしました。

最後は、なんとかアフリカへの出発前に読み終えようと無理矢理読み終えましたが、こういう読書は得るところがありません。つまりは、「この本は自分に合わない」と思ったときにはさっさと見切りをつけて次の本にかかった方が生産的だ、と反省させられた一冊でもありました。