水掛

2002/04/21

タイやラオス、ミャンマーなどの東南アジアの国ではこの季節は暑季といって1年で最も暑い時期にあたり、その4月13日前後にお釈迦様の誕生日=新年の始まりを祝う祭りが盛大に行われます(ちなみに今年は仏暦2545年)。この期間はお互いに水をかけあって新年の無病息災・豊作を祈るのですが、タイの水かけ祭り(=ソンクラーン)の中でもチェンマイのそれは特に有名で、水をかけるために放水車が出動するという噂も聞いたことがあります。その真偽については、ちょうどチェンマイのソンクラーンへ遠征に行ったウェブ仲間のyukoさんのレポートに期待することにして、こちらは東京で在日タイ人を中心に毎年行われている「タイ・ソンクラーン祭り2002 in 東京」で雰囲気を味わうことにしました。

朝起きてみると、あいにくの雨。どうせ濡れるのだからいいようなものですが、やはりからっと晴れた空の下でこそ、水を浴びるのも楽しいというものです。気を取り直して会場の都立葛西工業高校に到着すると、入口にはなぜか鮮やかな黄色と青のトゥクトゥクが置いてあり、ちょうどお坊様が2人並んで説教をしていて、その前に人々が神妙に座って頭を垂れているところでした。しばらく屋台の出店を冷やかしてから屋内に入り、やがて仮設ステージで始まったタイの伝統舞踊やムエタイなどを見ました。しかし、いつまでたっても肝心の水かけが始まる雰囲気がありません。外に出て出入口の係の人に「水かけはいつから始まるんですか?」と聞いたところ、「今日は雨が降っているからやらないかもしれません」との返事!

会場の入口のトゥクトゥクは子供たちのかっこうの遊び道具と化していました。その奥ではお坊様が信者たちを前に説教の最中です。

さまざまな食べ物の屋台が軒を連ねる会場。御飯もの、麺類、スープ、イサーンのソーセージ、ランブータンなどの果物や餅米とココナツミルクのお菓子。ラムヤイのジュースや揚げバナナもありました。

当然シンハビールも売られています。バンコクのホテルではビール1本2ドルが相場でしたから、おおむねリーズナブルです。

売られているのは食べ物ばかりではありません。各種手工芸品や、カントーク・ディナーのときに見た三角形の枕なども並んでいました。

これはかなり高い!バンコクなら2時間で1,000円程が相場。……しかしドンムアン空港では外国人向けレートで30分400バーツでしたから、やっぱりこんなものかもしれません。

五つの伝統舞踊。カラフルな衣裳と優雅な手の動きがきれい。最後に踊られた大人数での蛇の踊りは子供たちの遊びでもあるとのこと。男役の役者に詰め寄られて縦列になったダンサー達が逃げ惑うのですが、だんだん真剣になり、勢い余って転倒する場面までありました。なお、このうち本当のタイ人は実は2人だけ。

ムエタイのパフォーマンスもありましたが、試合ではないといっても、そのスピードとキックの重さはなかなかの迫力でした。

また、ダンサーたちも加わって賑やかに歌い踊られたイサーンの農村歌劇は、本場では夕方から明け方まで続くそうです。ここで、時間をおいてから出直してくれば水かけが始まるかもしれないと淡い期待を抱いていったん会場を離れ、近所のとんかつ屋さんでゆったり座って昼食をとり14時過ぎに会場に戻ってみると、やってるやってる、小規模ながら歓声と水の跳ね飛ぶ音が響き渡っています。こちらも持参のペットボトルを取り出し、水道の水を詰めて無差別攻撃に参加していきました。ところが、敵はカラフルな水鉄砲やバケツなどで武装しており、まったく相手になりません。まるで、巡航ミサイルやステルス爆撃機が飛び交う中を三八式歩兵銃一丁で匍匐前進しているようなものです。

近代兵器で武装した参加者たち。一見大したことはないように思えますが、その攻撃力は案外侮れません。彼女たちに集中放火(水)を浴びて後退する私。歪みきった画像が攻撃の凄まじさを示しています。

国籍関係なしの市街戦状態。誰が敵で誰が味方かという区別はもはや存在しません。そしてさらなる惨劇!会場の中央に引きずり出されて集中攻撃を浴びる者が続出しました。ただし、大半は会場となった都立葛西工業高校の野球部員だったようです。

犠牲者の哀れな姿。彼がこの体験(PTSD?!)を乗り越えていくためには、来年のソンクラーンで水をかける側に回るしかないでしょう。そして勇戦30分、私もあえなく退却を余儀無くされました。阿鼻叫喚を背に戦線を離脱。沢登りそのままのスタイルで参加して防御面は十分でしたが、攻撃力がまったく伴っていませんでした。来年は武装を見直して、雪辱を果たすつもりです。

……とおちゃらけて書きましたが、ソンクラーンは敬虔な仏教徒であるタイ人たちにとって大切な儀式です。この記事を見て興味をもたれた方は、その点への理解と敬意をあらかじめもった上で、来年御参加ください。