再会
2002/12/14
The Zombiesの『Odessey and Oracle』は1968年に発売された彼等のセカンドにしてラスト。楽曲はRod Argent(k)とChris White(b)が供給し、サウンド的には60年代風のリズムとギターの上にArgentの多彩なキーボード(ピアノ・オルガン・メロトロン(!))が乗って、Colin Blunstoneの切なげなボーカルにArgntとWhiteのコーラスが絡む必殺のアルバムと言えるでしょう。
1曲目の「Care of Cell 44」は先日のDJイベント「Beauty’s Night」でfruupp=kyonさんがかけていたのをはっきり覚えているくらいキャッチーで印象的な曲。金属的なピアノのイントロから意外にバスドラが細かいドラムにBlunstoneのややハスキーな(歌詞によくフィットした)ボーカル、ややあって中音域を生かしたフラットワウンド系のベースがメロディアスに入ってきて、ふと気付くとメロトロンも忍び込んでおり、真ん中のThe Beach Boys風のコーラスを聴いたらもう絶対忘れようがありません。CDの解説によればArgentによるハーモニーのアレンジは彼が聖歌隊で歌った経験によるものだそうで、そういえばYesのベーシストChris Squireも聖歌隊上がりだったことを思い出し、そうなると一筋縄ではいかない彼のコーラスセンス(例えば「Going for the One」でChrisが歌う奇怪なカウンターメロディ)は聖歌隊体験の賜物か?などと早くも連想はあっちの方へ飛んでしまいかけましたが、2曲目のピアノとボーカルによる「A Rose For Emily」でなんとか現実に引き戻されます。
その後もアコースティック・ギターのイントロと途中のドラムの音処理が美しい「Maybe After He’s Gone」、リバーブのきいたギターとオルガンに物憂いボーカルがムードたっぷりの「Beechwood Park」など実にさまざまなスタイルの曲がキラ星のごとく並んでいて、まったく捨て曲なし。そして目が点になったのは(ボーナストラックを除けば)最後の曲「Time of the Season」。これは知っている!たしか20年以上も前にサントリーのオールド&ペリエのファンタスティックなCMでBGMに流れていた曲です。このCMは摩訶不思議な映像感覚がとても気に入って記憶の奥にずっと残っていたものなのですが、まさかこんなかたちで再会することになるとは。
The Zombiesはこのアルバムを出したときには既に解散していた(しかしこのアルバムがアメリカで大ヒットしたために偽者バンドがTV出演したなどの逸話があるそう)ものの、その後Rod Argentが率いるバンドArgentはシーンで活躍し続け、さらに近年4枚組ボックスセット(公式アルバムは2枚しかないのに?)が評判を集めるなど再び注目を集めつつあるようです。この辺りの体系的な解説はいずれfruuppさんがまとめてくださるものと期待しつつ、もう一度『Odessey and Oracle』を聴きかえすことにしてみましょう。