休暇

2005/05/23

昨年4月26日に武道館で行われたDream Theaterのライブを収録したDVDを、ここのところ繰り返し見ています。

自分自身、この3時間に及ぶライブを直に体験したのですが、こうして映像化されてみると改めて彼らの超絶技巧とパワーに圧倒されます。まずはなんといっても強力なツーバス連打で始まる2曲目「This Dying Soul」の最後に出てくるギターとキーボードの長大な超高速ユニゾン。ギターのJohn Petrucciは高速フレーズを弾くときは左足をフットレストに乗せ、ギターを左足の上に固定して弾くので、手元がカメラにばっちりとらえられています。また、この曲ではボーカルのJames LaBrieも足元のスイッチで頻繁に声にエフェクトをかけているのがわかります。インターミッション後の「New Millennium」では、ベースのJohn Myungがベースではなくスティックを弾いているため、トレードマークのさらさら長髪をこの曲だけ後ろでまとめているのが微笑ましい感じ。最後の曲「In the Name of God」でもプレイヤーの技巧が見事に視覚化されていて、高速フレーズの中に織り込まれたJohn Petrucciのスウィープ奏法やJordan Rudessの流麗な指さばきが見事ですし、ここまで曲の複雑さに圧倒されっぱなしだった聴衆(私もその1人だったわけですが)がドラマティックなこの曲にどんどんヒートアップしていく様子は感動的で、最後のコーラスを聴衆全員で合唱する頃にはJames LaBrieの目にも光るものが……。見ているこっちも泣けてきます。

2枚組のDVDのもう1枚はツアー・ドキュメンタリー、ギターとキーボードの機材解説、大阪でのドラムソロ、オープニングで使われたメドレー映像、そして「Instrumedley」のマルチアングル。ツアードキュメンタリーでは、彼らの「Budokan」に対する思い入れを語るコメント、リハーサルの様子、それに腱鞘炎やひどい時差ボケに苦しめられる姿などが収録されていて、彼らも厳しい状況の下で武道館の3時間を戦ったんだなと感心。機材解説はそれぞれの楽器を弾く人にはかなり楽しめる内容で、たとえばギターはエフェクターや15本のギターのセッティングをデータベース化して管理している様子、それにステージ上でやたらと唾を飛ばすドラムのMike Portnoy(のことをJohn Petrucciは「Camel」と呼んでいます)からアンプを守るためのアクリルのボードも紹介されて笑えます。かたやキーボードの方は、マスターキーボードのKurzweil K2600を中心とするシステムの紹介で、キーボード上には楽譜等を表示しているMusic Pad Pro、回転式のスタンドの周りにはダンパーペダル、ワウワウペダルが2組、音色切替ペダルが一つ。MIDIでコントロールされるKORG Karma、ラックマウントのK2600RackとKORG Tritonはバックアップを含め各2セットで、停電対策用のパワーサプライまでラックに組み込まれています。また、うれしいマルチアングルの「Instrumedley」では好みの楽器の様子をじっくりと見ることができて、ベースを弾く私の立場からはJohn Myungが表情一つ変えずに怒濤の早弾きやタッピングを披露するシーンが圧巻。ちなみに、どうも彼の弾き方を見ていると、タッピングは別としてそれ以外は意外にソフトなタッチで、楽器とアンプの音作りでパワーを出しているように思えますが、果たして真相やいかに。

……といった具合に見どころ満載のDVDでいくら見ても見飽きないのですが、早くも彼らの新譜の発売が6月に予定されているのだとか。何たる仕事熱心!果たして彼らの辞書に「休暇」の2文字はあるのでしょうか?