光芒

2005/06/18

近頃、日本経済新聞にゲリラ的に(?)登場するこの広告が、けっこう気になっています。たとえば日経新聞(H17.6.17)国際欄という堅い紙面、反シリア派の過半数困難に レバノン議会選という重々しい記事の隣に、なぜかこの記事は異様なインパクトで光芒を放っていて、ついつい引きこまれてしまいます。

まず、この子は男の子なんでしょうか、それとも女の子なんでしょうか。表情だけを見るとどちらともとれそうですが、よく見ると右肩にくるりとかかっている髪の長さが微妙に女の子です。年齢も不詳ですが、仮に十代の半ばくらいとしておきましょう。フキダシのとげとげや逆ハの字の眉、驚いて振り返ったことをあらわす動線や放射状の背景線など、要するにこのコマのデザイン全てがこの子の受けた衝撃を示していますが、しかしながらマンガ特有の記号である「汗」が描かれていないことで、主人公の意思の強靭さが醸しだされてもいます。

それにこの子は、いったいどういうシチュエーションにおいて「無人島でおいしい水?」と叫ぶことになったのでしょうか。当然、その前には誰か他の人物(たぶんTOYOBOの回し者エージェント)の「無人島でおいしい水を作ることだってできるんだよ」との勝ち誇った説明が、それも背後からなされていたはず。では、2人はなぜそんな会話を交わしているのか、2人の関係はなんなのか、どうして背後から声を掛けたのか(掛けられたのか)、どこの無人島のことを話題にしているのか、想像しだすとキリがありません。

また、この広告をプレゼンした広告代理店と、それを採用したクライアントの勇気にも拍手。いったいどれだけの候補の中からこのプランが採用されたのかわかりませんが、おそらくは交錯したであろう「いいのかな?」と「いってみよう!」の葛藤が想像されて、なにげに感動的ですらあります。

……などとあれやこれやを考えているうちに、通勤の40分間はいつの間にか過ぎてしまうのでした。