過剰

2005/06/26

仕事がら、情報セキュリティ関係の事件・事故にはおのずと敏感にならざるを得ません。VISA・Masterカードの利用者情報がトロイの木馬によって約4,000万件以上も流出させられた事件には「さすがアメリカ、スケールが違う」と感心したり、原子力発電所の内部情報がWinnyによってばらまかれてしまい、しかも原因を作ったスリーダイヤモンド系の会社が私物のパソコンの業務使用を禁じていなかったという記事には「アホか!」と呆れたり。

しかし近頃の話題といえばなんといっても、今年の4月1日から完全施行された個人情報保護法がらみでしょう。けっこうずっこける事件が多いのですが、たとえばこんな記事。

生徒のけんか→刑事事件 個人情報保護法理由に相手の名前教えず 大阪の府立高校(2005/06/04)

大阪市の府立高校で生徒同士のけんかで負傷した生徒の親が、相手生徒の謝罪を求め、学校に氏名や連絡先を問い合わせたところ、個人情報保護法を理由に拒否されたため、被害生徒側は警察に被害届を提出し、刑事事件になってしまったというもの。まぁ、けがの程度にもよりますが。

学校でケガ 病院、『症状は個人情報』と(2005/06/22)

4月に個人情報保護法が全面施行されてから、医療機関が学校でけがをして外来に来た児童、生徒の症状や治療内容を、付き添いの教師らに教えない事例が相次いでいるそうです。神戸市教委は混乱を避けるため、保護者に前もって「同意書」を提出してもらうことを決め、各校長らに通知したそうな。

どちらも、理屈の上では正しいのですが、いわゆる「常識」とはちょっとずれているような気もします。これは個人情報保護法のもつある種のあいまいさ(例外の不特定性)に由来するのは間違いなく、そのため過剰防衛というか疑心暗鬼というか、いずれにせよ格好の新聞ネタになっているわけです。もっとも、この「あいまいさ」が飯のタネになってくれているおかげで、新聞記者だけでなく私自身も三度のご飯が食べられるのですから、文句は言えません……。

そんなわけである日の夕食、霞ヶ関ビルでの会合の後に虎ノ門の定食レストランでリーズナブルなお値段のけっこうおいしい定食をいただきながら、テーブルに置かれていたチラシのようなものを読んでみると、「ぶたのはなし」。いわく「良質なタンパク質源」「ビタミンB1の宝庫」!イスラム教徒の皆さんには申し訳ありませんが、私も豚肉料理はけっこう好きで、このチラシを見てますます意を強くしたのですが、裏返してみると、実はこのチラシは料理や接客の満足度を記入させるアンケートでした。そしてその冒頭には、以下の記述が。

利用目的の特定度合いも必要十分、データ廃棄の時期も明示するなど、個人情報保護法への目配りが完璧で、この手のアンケートのお手本に使えそう……なのでこうして1枚失敬してきてしまいました。