訃報

2007/09/14

最近、2人の芸術家の訃報に接しました。

1人は、キーボード奏者のJoe Zawinul。言うまでもなく、Jaco Pastoriusを擁した先鋭的なフュージョングループWeather Reportのリーダーです。メンバーを入れ替えながらもサックスのWayne Shorterとの双頭バンドとして長く続いた彼らの数多い作品の中で、私が最も評価しているのは名盤の誉れ高い『Heavy Weather』(1977年)。Jaco大活躍の「Birdland」や「Teen Town」もさることながら、自在のリズムセクションの上でシンセサイザーやエレピ、アコピをカラフルに奏でる「Palladium」「The Juggler」「Havona」の三曲の完成度の高さは、今聴いてもまったく古さを感じさせないほど。Weather Reportとしての活動を終えた後も自身のバンドを率いて来日したり、近頃は『Z』なんて高年齢者向けの雑誌で粋な爺さん=粋Z役でモデル(?)としても活躍したりと日本になじみの深いミュージシャンでしたが、私自身はついに直接その演奏に触れる機会を得ることができませんでした。享年75。

もう1人は日本画家の高山辰雄氏、享年95。独特の寂しい雰囲気を持つ氏の女性像が私は好きで、その作品展には何度か足を運んだものです。たとえばこれは「女の子」。生気のない肌の色、切れ長の細い目が、この世のものとは思えない儚い存在感を彼女に与えていますが、この作品は2001年の個展『日月星辰展』で新作として披露されたもの。氏の旺盛な創作意欲は、90歳になろうとする時期にも衰えることを知らなかったようです。

今は敬愛するお二人の冥福を祈るばかりですが、人に天寿というものがあり、私の好きなアーティストたちの多くが私よりも年上であることを考えれば、これからもいずれこうした記事を次々に書くことになるのでしょう。仕方のないこととわかってはいても、なんだかやるせない思いがします。