奥深
2008/10/28
知人のピアノ調律師ありか先生のお誘いで、彼女の友達である声楽家の栗田真帆さん(メゾソプラノ)と柏原美緒さん(ソプラノ)のジョイントコンサート(ピアノ:鳥井俊之氏)を、台東区のミレニアムホールに聴きに行きました。土地柄のせいか客席は異常に平均年齢が高かったのですが、ステージ上の2人はちょうど三十路に乗ったばかり。大台乗りをネタにした自虐ギャグも交えつつ、オペラ歌手らしく軽妙なトークと曲にまつわる寸劇で巧みに曲間をつなぎながら、ミュージカルの曲を次々に歌ってくれました。
- タラのテーマ(「風と共に去りぬ」M.スタイナー)
- ベッラ・ノッテ(「わんわん物語」Sバーク)
- 雨に唄えば(「雨に唄えば」N.H.ブラウン)
- ソー・イン・ラブ(「キス・ミー・ケイト」C.ポーター)
- 慕情のテーマ(「慕情」S.フェイン)
- 侯爵様、貴方の様なお方は(「こうもり」J.シュトラウス2世)
- 恋はやさし 野辺の花よ(「ボッカチオ」F.v.スッペ)
- ハイヤ!山は我が故郷よ(「チャールダーシュの女王」E.カールマン)
- ショーほど素敵な商売はない(「アニーよ銃をとれ」I.バーリン)
- ジャスト・ユー・ウェイト(「マイ・フェア・レディ」F.ロウ)
- 虹の彼方に(「オズの魔法使い」H.アーレン)
- アイ・フィール・プリティ(「ウエストサイド物語」L.バーンスタイン)
- あんな男に〜私は愛している(同上)
- サムウェア(同上)
- トゥナイト(同上)
- 私のお気に入り(「サウンド・オブ・ミュージック」R.ロジャーズ)
- 踊り明かそう(「マイ・フェア・レディ」F.ロウ)
上記の他に「ドレミの歌」を会場の聴衆と一緒に歌うといったコーナーもあって、お年寄りにもフレンドリーな暖かみのあるコンサート。特に「マイ・フェア・レディ」の「ジャスト・ユー・ウェイト」(もちろん「ジャスト・ユー・ワイト」と訛る)での美緒さんの演技と歌いっぷりは、目の前にオードリー・ヘプバーンのイライザが現れたかのよう。真帆さんの「サムウェア」も、最後のパートでぐっと聞かせました。でも、ミュージカルは見せ玉にして、もっとオペレッタやオペラの曲を交えてくれてもよかったかも。なにしろ、オペレッタ「こうもり」から「侯爵様、貴方の様なお方は」では、ソプラノの美緒さんがその本来の力量を見せつけて会場を完全に圧倒したのですから。
さて最後に、このコンサートでスタインウェイの調律を担当したありか先生に、今回の調律方針を聞いてみましょう。
はい、今日はどちらかというとメゾソプラノを意識し、220HzのA音の下のF音から1オクターブと5度上のC音までの中音域で5度がきれいに鳴るようにしてあげて、高音域は倍音を出してきらきらした音色にしてみました。
うーん、なんだかよくわからないが、奥が深い……。