太陽

2008/11/30

シルク・ドゥ・ソレイユの『ZED』を見ました。

「シルク・ドゥ・ソレイユ」(フランス語で「太陽のサーカス」)は1984年にカナダ・ケベック州で生まれたサーカス団。『ZED』は今回のショウのタイトルで、過去には『サルティンバンコ』『アレグリア』『キダム』『ドラリオン』といったショウを引っさげて来日しています。今回のショウは、これまでのようなツアーではなく、常設シアター「シルク・ドゥ・ソレイユ シアター東京」でのものです。

ショウは冒頭、円形ステージのはるか上空から舞い降りてきたゼッドが、ステージ中央の穴へと背中から落下し、その途端に縦横数十mもある巨大なステージ全体を覆っていた薄青色の布がもの凄い勢いで穴の中へ吸い込まれていくショッキングなオープニングから始まります。この場面の猛烈なスピード感、そしてあらわになったシアターの天体観測儀を模した立体的な構造の迫力に、まずは圧倒されます。その後はバトントワリング、ジャグリング、ロープや棒を使った曲芸、綱渡り、空中ブランコなどのサーカスならではの演技が続きますが、とりわけ布やロープに身体の一部を巻き付けただけで客席の頭上を自在に飛翔する女性たちの空中舞踊には息をのみます。どの演目をとっても重力を感じさせない滑らかな演技で、たとえば直立した棒を自在に登ったり腕だけで旗のように身体を横になびかせ、次の瞬間に数メートルの高さから真っ逆さまに落ちたと思ったら地上数十センチのところで棒に身体を巻き付けてぴたりと止まったりする演技などは、あまりに凄すぎて最初のうち上から吊るされているのだと思ってしまったくらい。印象的な照明・音楽・衣装・舞台機構が一体となって幻想的な世界観を創造していて、2時間ではとても足りない、もっと見続けたいと思わせました。

なお、

彼の名は、Zed。この主人公が旅するのは、天と地のまったく異なる二つの世界。旅の途中、彼は大いなる女神、愚かな者たち、スフィンクス、サテュロスといった、色々な登場人物に出会います。彼が出会った世界とそこに息づく生命たちは、どれもバイタリティに満ち溢れ、Zedにさまざまなインスピレーションを与えていきます。これらの経験を通して彼自身が成長すると同時に、彼を通して天と地という異なる二つの世界が一つに結ばれようとします。

というコンセプトがあらかじめ示されているのですが、それにしては狂言回しのゼッドと2人のクラウンの位置づけは、いまひとつ意味不明。クラウンの出番を刈り込んで全体のスピード感をもっと高めれば、さらに面白くなるだろうと思ったのですが、まあいろいろな都合というのがあるのかな。

終演後は、池袋の「海鮮山」へ。ここは先日場所がわからずに30分も環状彷徨してしまったところですが、それでは山屋の矜持が許さぬと、再訪問の機会を窺っていました。幸い今回は問題なく到達することができて溜飲を下げ、おいしい魚と日本酒に舌鼓を打ちながら、「ZED」の感想を熱く語り合いました。