曖昧

2008/12/09

ここに「黒い目のきれいな女の子」という一文があります。

問)この子は女の子でしょうか?

答)そうとは言いきれない。

これは、日本語の曖昧さを例示する有名な文章なので、既に知っている人も多いと思います。しかし、今日、会社のプロジェクトマネジメント研修でホワイトボードに板書された上記の文章を前にして、ほとんどの受講生がつまずいてしまいました。

研修自体は、プロジェクトマネジメント技法のスタンダードであるPMBOKをベースに、PMとしての基礎的な方法論を学ぶという初歩的なもので、今さらの感もありましたが、現在の勤務先での共通言語を学んでおいて損はないだろうと手をあげたもの。一般的にプロジェクトマネジメントはプロジェクト目標を設定し、これに基づいてWBSを記述するところからスタートするわけですが、大事なのは発注者との間でスコープをしっかりと合意しておくこと。これがおろそかだと、後々仕様変更やら追加テストやらが生じてコストオーバーランの失敗プロジェクトとなってしまいます。こうした事態を回避するためには、曖昧さを排除した日本語の使い方ができなければならない、ということで冒頭の設問になったわけです。

以下、解釈の例をあげてみましょう(これでも解釈の可能性は網羅されていません)。

  • 黒い目の、きれいな女の子。→ 黒い目をした、きれいな女の子。(←第一感はこれ……)
  • 黒い、目のきれいな女の子。→ 肌の色が黒い、目のきれいな女の子。
  • 黒い目のきれいな、女の子。→ 黒い目がきれいな、女の子。
  • 黒い目のきれいな女の、子。→ 黒い目がきれいな女の人の、子。(←男かもしれないし、成人しているかもしれない)
  • 黒い目の、きれいな女の、子。→ 黒い目をしていてきれいでもある女の人の、子。
  • 黒い目の、きれいな女の、子。→ きれいな女の人の子で、その子は黒い目をしている。
  • 黒い目のきれいな、女の、子。→ ある女の人の子で、その子は、黒い目がきれい。
  • 黒い目のきれいな、女の、子。→ ある女の人の子で、その女の人は、黒い目がきれい。

読点の、適切な、使い方によって、曖昧さは、相当程度、排除できる、ということ、なのですが、日本語は、本当に、難しい。