静夜
2008/12/24
フィラデルフィア出身でロンドンに制作拠点を置く双子のパペット・アニメーション作家、クエイ兄弟。彼らの作品に触れたのは、お勧めレーザーディスクを紹介する雑誌で『ストリート・オブ・クロコダイル』が採り上げられているのを見て、その幻想的な作風に興味を持ったことに始まります。
このLDは9,300円もして買うのに勇気がいりましたが、すぐにお気に入りの作品となりました。とりわけタイトル作品の「ストリート・オブ・クロコダイル」は、埃だらけの模型の町、空っぽの頭蓋をあらわにしたマネキン人形たち、意思を持っているかのように蠢くネジ、丁寧に紙に包まれる生の肝臓といったおぞましいイメージが、パペット・アニメーションならではのシュールな動きを見せて名状しがたい不安を見る者の脳裏に刻み付けます。
このLDには他にも「レオシュ・ヤナーチェク」「ヤン・シュバンクマイヤーの部屋」「ギルガメッシュ / 小さなほうき」「失われた解剖模型のリハーサル」といった、いずれも悪魔的で魅力あふれる1980年代の作品が収録されていましたが、1999年に映画館BOX東中野の企画『ブラザーズ・クエイ短編集 Vol.2』を見て、このLDに収録されていない「スティル・ナハト」シリーズにノックアウトされてしまいました。ダークで悪魔的なエロティシズムが漂うアリスとうさぎの世界は、一度見たら二度と忘れられません。
この「スティル・ナハト」をもう一度見たいと長年思っていたのですが、ふとしたきっかけで中古DVDの輸入販売サイトに「スティル・ナハト」を含む『The Brothers Quay Collection』が紹介されているのを見つけ、迷うことなく注文した次第。
収録作品は、以下の通りです。
- The Cabinet of Jan Svankmajer (1984年)
- The Epic of Gilgamesh or This Unnameable Little Broom (1984年)
- Street of Crocodiles (1986年)
- Dramolet (Stille Nacht I) (1988年)
- The Comb (from The Museums of Sleep) (1991年)
- Anamorphosis or De Artificiali Perspectiva (1991年)
- Are We Still Married? (Stille Nacht II) (1991年)
- Tales From the Vienna Woods (Stille Nacht III)(1992年)
- Can't Go Wrong Without You (Stille Nacht IV) (1992年)
本当に久しぶりにこれらの作品を見ましたが、うーん、やはり凄い。彼らの作品の世界観を言い表す単語を一つだけ選ぶとすれば、それは「静夜」ではなく「悪夢」でしょうか?