芋限

2009/08/01

今年2月のJeff Beckの来日と前後して購入したDVD『ライヴ・アット・ロニー・スコッツ・クラブ』を今さら紹介するのは気が引けるのですが、それでも練達のVinnie ColaiutaのドラムとJason Rebelloのキーボード、やんちゃなTal Wilkenfeldのベースに乗って、生けるギター・レジェンドJeff Beckが縦横無尽にギターを歌わせていて、しかも驚くことにこれがJeff Beck公認の唯一の映像作品だというのですから、やはり紹介しないわけにはいきません。タイトルの通り、ロンドンのロニー・スコッツ・クラブという信じられない程小さなハコで、ミュージシャン同士がお互いの存在をPA通しではなく肌身に感じながら、緊密なコミュニケーションが図られているのがよくわかるライブです。その上、この作品には(異なる日に出演した)3人のゲストが登場し、そのうちの1人はあのEric Claptonです。JeffがThe master of the Stratocasterと紹介してEricが姿を現すとクラブの興奮は最高潮に達しますが、2人で仲良くブルースナンバーを弾く姿には、凄い!というよりむしろ微笑ましいものを感じます。

が、ここで紹介しておきたいのは、Ericに勝るとも劣らない存在感を示したゲストの女性シンガーImogen Heapです。もともと2000年にリリースされたJeffの作品『You Had It Coming』に起用されたところで私も初めてその声を耳にしたのですが、この作品に収録されたダンサブルなアレンジの「Rollin' & Tumblin'」はこちらのDVDでも歌われており、Imogenのダンスに後ろでTalが顔をくしゃくしゃにして「きゃー!イモ姐さん、ステキ」(←想像)という表情を見せているのが笑えます。しかし、彼女の本領はもう少し叙情的で繊細でジャジーな歌い回しにあるようで、むしろImogen自身の持ち歌である「Blanket」に引き込まれました(スペースを十分に活かしたJeff Beckの歌モノにおけるバッキングの意外な巧さにも!)。

このパフォーマンスに刺激されて彼女のソロ作『Speak For Yourself』も買って聴いてみたのですが、アルバムではこの曲だけゲスト参加のJeff Beckが刺激的なギターソロを披露している「Goodnight and Go」や、アメリカのTVドラマの主題歌として有名になった「Hide and Seek」、リズミカルでいてガラスのような繊細さも併せ持つ「Just for Now」、さらに透明な音作りが心にしみいる「The Moment I Said It」などは非常に印象的な曲で、マイフェイバリットアルバムの1枚になりました。

ライブでの彼女は、キーボードやコンピュータに各種エフェクトなども駆使して、かつてのHoward Jonesを思い出させるようなソロパフォーマンスを見せてくれるようですが、ぜひ一度、そのヴォイスをじかに聴いてみたいものです。