無星
2010/02/27
先日Yesの話題をとりあげたので、ついでにKing Crimsonも(我ながら、古いバンドばかり)。
1970年代King Crimsonのラストアルバム『Red』が、バンドの結成40周年記念エディションとして5.1サラウンドのDVDオーディオとHQCDの2枚組になってリリースされたのが、昨年の10月のこと。どうせ5.1サラウンドなんて聞かないから、Robert Frippの商魂には乗せられないぞ、と無視していたのですが、うかつにもこのDVDにスタジオライブの映像が含まれていることを知ったのは年が明けてからでした。
気になる収録曲は以下の通り。さすがにこれは、買うしかありません。
- Larks' Tongues in Aspic Part II
- Nightwatch
- Lament
- Starless
フランスのTV局が1974年3月に収録した映像だそうで、時代を反映してサイケデリックな映像効果が背景にかぶせてあり、特に「Nightwatch」などは全編色彩を反転加工していて残念ですが、演奏自体は素晴らしい出来。Robert Frippの執拗なカメラ目線に怯えながら「Larks' Tongues in Aspic Part II」を聴き、「Nightwatch」でJohn Wettonの叙情的なボーカルに聞き惚れ、「Lament」ではBill Brufordの奔放なドラミングにノックアウトされて、そして極めつけが名曲「Starless」です。
King Crimsonといえばメロトロン、そしてメロトロンと言えば彼らのデビューアルバムでの「Court of the Crimson King」という図式が出来上がっていますが、私の見解では、メロトロンの代表曲はまさにこの「Starless」。『Red』リリース前でお世辞にもインプロヴィゼーションが得意とは言えないヴァイオリンのDavid Crossが在籍している時期のライブだけに多少荒削りな部分はあるものの、ステージの左右でRobert FrippとDavid Crossが交互に鳴らすメロトロンの音色は感動的です。この「Starless」の演奏をテレビで見たフランス人たちは、間違いなくぶっ飛んだことでしょう。
ちなみにこちらがスタジオ盤のイントロでの、ひんやりとした夜を示すメロトロンとテーマフレーズ。
同じコード進行とフレーズが、最後はリズムセクションの力によってこんなに感動的なフィナーレに!
後にU.K.でJohn Wettonのトレードマークとして使用される白いFender Precision Bassがブリブリ言いながら、闇夜の暴風雨の彼方に夜明けの希望の気配を見せて終わるこの曲は、King Crimsonの歴史そのものの締めくくりに最もふさわしい楽曲だったと言えるでしょう。この曲を『Red』の最後に置いたことで、Robert FrippはKing Crimsonを解散することを決めたのでは?と思わせられるくらいです。