真摯

2010/09/01

今日はボルダリングや飲み会の話ではなく、アイドルの話。

私にとってのアイドルと言えば、かつては西田ひかるさん、ここ数年は宮﨑あおいさん……という話はさておいて、ここで紹介するのはびっくりベストセラーになった「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」(岩崎夏海)。先月買って、通勤の電車の中で読み始めたのですが、あまりのわかりやすさと軽快な文体に、自分にしては珍しく一気に読み通してしまいました。

表紙の萌え系アイドルっぽい女子高生(何もここまでミニでなくても……)の画像にびびって、人前ではカバーをはずして読んだのですが、ストーリーは、ある理由から野球部のマネージャーを務めることになった高校2年生の川島みなみが、マネージャーになるのだからと書店で店員の勧められるままにドラッカーの『マネジメント』を買ってしまい、一度は自分の粗忽さにうんざりするものの、読み進めるうちにそこからさまざまな啓示を受けて、ダメ野球部の改革に乗り出してゆくという話です。

まず冒頭に「マネージャーの資質」は才能ではない。真摯さであると書かれている箇所を読んで、なぜか自分でもわからないままにみなみがさめざめと泣くくだりが出てきます。みなみにはちょっと変わったところもあり、それが端的に出てくるのがこの場面ですが、これですっかり感情移入できてしまうと、みなみが『マネジメント』から引き出す教訓が野球部経営に次々に活かされてゆく様子に喝采を送りたくなってきます。たとえば、野球部とは何かという疑問に対し『マネジメント』から「われわれの事業は何か。何であるべきか」を定義することという言葉を引き出し、やがて野球部は顧客に感動を与えるための組織であるという定義を導き出すと、そこから先、みなみは頼りない監督、協調性に欠けるエースといった問題人物たちと向き合う過程で、その随所に『マネジメント』からの引用とみなみ流の解釈を散りばめて、一つ一つ課題を解決し、「感動を与える」=「甲子園に出る」という目標の達成に向けて野球部を引っ張ってゆくのです。

ストーリーの終盤にみなみがマネージャーになった理由が明らかにされるくだりの話法はちょっと稚拙な感じがしないでもないですが、青春小説としてとても面白く読めましたし、『マネジメント』のイントロダクションとしても十分に効果的。でも、ここで終わってしまったのではこの本を読んだ意味がありません。やはり『マネジメント』そのものを読まなくては。

……というわけでドラッカーの『マネジメント』(ただしエッセンシャル版)を読んでいるところなのですが、果たしてみなみのように「真摯に」読みこなすことが自分にできるでしょうか?