推薦

2019/07/12

先月受験した公認不正検査士試験の合格証が到着しました。

昨年6月末に勤め先の監査役に就任してからほぼ1年、そろそろまとまった形で仕事に関わりのある学習をしてみようと思い立ち、資格試験をあれこれ物色してみたところ目に止まったのがこの資格です。これはどういう資格かというと……。

ACFE(本部:米国テキサス州)が認定するCFE(Certified Fraud Examiner, 公認不正検査士)は、不正の防止・発見・抑止の専門家であることを示す国際的な資格で、組織内外で発生する不正から組織を守るための取り組みにおいて専門性を発揮します。

だそうです。

「不正のトライアングル」と呼ばれる「動機」「機会」「正当化」のうち、内部統制では「機会」は低減できるものの「動機」「正当化」は制御できない、という考え方から、一般的な内部統制システムの構築運用に加え、不正の疑惑が生じたときに的確な調査を進められる体制の構築に貢献する専門職として、CFEは定義されています。米国系の類似ジャンルでの公認資格としてはCPA(Certified Public Accounting, 公認会計士)やCIA(Certified Internal Auditor, 公認内部監査人)が日本でもよく知られており、CFEはそれらに比べるとまだ知名度が低いように思いますが、監査役として監査法人や内部監査部門と連携する立場に立つことを考えると、自らCPAやCIAをとることにはさして積極的になれません。かたやCFEの試験科目を見たところ、これならさほど勉強しなくてもいけるのではないか?という少々不純な動機が生じたことも、この資格の選択を後押ししました。

試験は二日制で、以下の四科目について各125問の多肢選択式。科目ごとに、正答率が75%以上で合格です。

財務取引と不正スキーム
会計、財務分析の基本、監査基準の概要、各種不正スキームに関する知識、など
法律
法制度の概要、不正に関する法律、調査における個人の権利、訴訟手続き、雇用・IT 関連法、など
不正調査
書類証拠の取り扱い、面接調査、情報源の活用、不正取引の追跡調査、調査報告書作成、など
不正の防止と抑止
人間行動の理解、犯罪原因論、ホワイトカラー犯罪、職業上の不正、不正防止プログラム、不正検査士の倫理、など

仕事柄、財務諸表を見ることには慣れていますし、コンプライアンス関連の仕事も長く経験しているので不正調査や不正防止対策などはお手のものです。さらに、この試験で自分にとってのアドバンテージになりそうなのは「法律」。というのは、この資格が米国生まれであることを反映して、日本法のみならず英米法と大陸法の両方の考え方(の違い)にある程度精通している必要があるからです。

イギリスの歴史に根ざすコモン・ローの発想法は、多くの日本人にとっては一朝一夕で身につくものではなく、その学習に苦労した受験者も少なからずいたものと想像されますが、幸いに自分は大学で英米法及び刑事訴訟法(戦前の大陸法系の同法に戦後英米法の考え方が大幅に導入されています)の講義を受けていたので、この面のハードルは高くありません。実は、先日母校へ卒業証明書発行の手続をしに行ったのも、この試験の受験を申し込むために必要があったからでした。

これまでに自分が取得した資格としては「情報セキュリティアドミニストレータ」「システム監査技術者」「認定コンプライアンス・オフィサー」などがありますが、それらの資格と比較しても、このCFEは自分の学生時代から今日に至るまでのキャリアとの親和性が最も高い資格であったということができそう。そのことは、受験勉強が一夜漬けに近いもの(『不正検査士マニュアル【要約版】』を2回通読しただけ)ですんだことが証明しています。まぁ、まだ知名度が低い分、合格率も高いようなのですが。

さて、CFEになるためには、この資格試験の合格は必要条件ではあっても十分条件ではなく、この後にいくつかの手続を踏まなければなりませんが、そこで必要になるのが「3名からの推薦状」です。推薦者は申請者本人の不正対策関連業務における仕事ぶりおよび人柄をよく知る立場にある方に限るとのことなのですが、1人は同僚監査役に依頼するとして、あとの2人をどうするべきか思案投首中。誰かヨイショしてくれそうな2人を見つけて買収しなくては(←こういうのを「不正」と言います。もちろん実行してはいけません)