塾長の備忘録

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私=juqchoの日常の雑感を不定期に綴る、個人的な備忘録。

砂漠

2022/02/17

新型コロナウイルスワクチンの3回目を2月15日に接種。モデルナ→モデルナ→モデルナです。副反応が心配でしたが、ここは運を天に任せ、前回同様に籠城の準備だけはしっかり行って接種に臨みました。

今日までのところの体温の推移はこんな感じ。モノクロは昨年8月の第2回、カラーは今回の接種後48時間における6時間ごとの体温を示しています。この通り今回の副反応は格段にやさしく平熱に対して1度あまり上がった程度。ほかには軽い悪心が感じられたのとモデルナアームが痛む程度ですみました。ただ、そうは言ってもジムに繰り出してトレーニングというわけにはいかない程度のダメージはあるので、この間にAppleTVで気になっていた映画を見ることにしました。

それがこちらの『DUNE: Part One』です。

SF小説のまごうことなき金字塔であるフランク・ハーバートの『デューン 砂の惑星』(1965年)を初めて読んだのは、文庫本の奥付にある「昭和48年6月15日 三刷」という日付から推測すると自分が高校生の頃。その頃の自分は読書欲が旺盛で、よく高校の図書室にこもって古典的なSF小説(クラークとかハインラインとかアシモフとか)や中国古典文学(『三国志演義』とか『水滸伝』とか)の全集物を片っ端から読んでいたものですが、例外的に自分でこの文庫本を買ったのは多分に石森章太郎の表紙絵に惹かれたからだろうと思います。一種のジャケ買いですな。

しかしそこに描かれた世界観の壮大さと緻密さには文字通りぶっ飛んでしまい、以後40年以上もこれらの文庫本は変わることなく私の書棚の一角を占め続けたのでした。

さて、この作品は1984年にデイヴィッド・リンチによって映画化されており、もちろん私もそれを見てはいるのですが、はっきり言ってこれは私の趣味には合いませんでした。ここであえて「趣味」という言葉を使ったのは、リンチ監督らしい「悪趣味的世界観」(Wikipediaの解説に使われている表現)が映画のあちこちに横溢しており、それだけがかろうじて評価の対象となる駄作に終わってしまっていたからです。

ところが、それから40年近くを経て昨年公開されたこの『DUNE: Part One』はデイヴィッド・リンチ版とは大違い。監督は『ブレードランナー 2049』(2017年)等で知られるドゥニ・ヴィルヌーヴで、「Part One」と銘打たれている通り二部作構想で制作されており、原作が構築した生態学的世界を細部に至るまで再現したその映像美は驚嘆に値します。とりわけ水の惑星カラダンと砂の惑星アラキスの描写は原作ファンを唸らせるレベル。その美しさを堪能するだけのために2時間半のこの映画を二度見したほどです。そうそう、ハンス・ジマーが音楽を担当していることもこの作品の重要なポイントでしょう。自分のアンテナ感度の低さのために映画館での上映期間中に見逃したのは痛かったなぁ。

以下の文章では固有名詞の読みを映画の字幕ではなく矢野徹による翻訳版に即して記述します。

もちろん、それでも尺の制約や時代の違いを反映して、原作の中の重要な場面やセリフが省略されていたり、何人かの登場人物の扱いに若干の疑問はあります。たとえばアラキーンの邸宅での晩餐会はリエト・カインズがアトレイデ家と夢を共有するそこそこ重要な場面ですが丸ごと削除。暗殺の達人でメンタートのスフィル・ハワトは保安管理に失敗した哀れな人物になってしまっているし、砂漠に逃れたポウルがクイサッツ・ハデラッハとして覚醒する場面も描き切れていない感じ。飛来するオーニソプターを操縦しているのがダンカン・アイダホであるとポウルが気づいた理由や、砂の上をちょこまか走るネズミ(ムアドディブ)の意味なども、原作を読んでいなければわからないでしょう。もっとも、撮影はされたものの編集の段階でカットされた場面もあったようですから、後日Blu-ray Discで「完全版」が出ればこのあたりは改善されるものと思われます。

その代わりゴム・ジャバールのエピソードやガーニイ・ハレックとポウルの格闘、ダンカン・アイダホの最期をはじめここぞという場面は時間を惜しまず描写しきっていますし、何より巨大な砂虫(サンドワーム)がスパイス採取クロウラーを襲う場面の迫力には息を呑みます。トンボ型のオーニソプターやリエト・カインズが女性である点には驚きましたが、原作には描かれていないアラキス統治の受諾のシーンやサルサ・セカンダスの描写、ハルコンネン軍によるアラキーン制圧の場面も見事に視覚化されており、唯一リンチ監督の「悪趣味」を引き継いだ観のあるハルコンネン男爵も悪役としての凄みが徹底され、映像作品ならではの魅力が付加されています。俳優陣では、アトレイデ公爵はやや優しすぎ、ジェシカは感情を露わにしすぎですが、ポウルとチャニ、ダンカン・アイダホ、それにユエはイメージ通り。またガーニイ・ハレックは原作とは異なる造形ですが魅力的。ただし、フレーメンにアラブ系俳優を起用していないことについては批判もあるようです。

ともあれこの『Part One』は、追手から逃れたジェシカとポウルが砂漠の民フレーメンに受け入れられるところまで。皇帝軍との大会戦を描き、ファイド・ラウサやイルーラン姫、エイリアが新たに登場するはずの『Part Two』は2023年10月に公開予定だそうです。こちらこそは映画館の大スクリーンで見なくては。

ところで、副反応は冒頭に記した通りなので食事も普通にとれているのですが、おかげで前回同様に食べ物が喉を通らないことを想定して購入した非常食の類は、単にもぐもぐタイムを増やすだけの結果に終わってしまいました。アイスなどであれば冷凍庫で夏まで寝かせておけばいいのですが、そうはいかないものもあり、がんばって消化中です。

プリンは100g当たり140kcal、そして「大」ひとつが380gということは532kcal。これはまちがいなく太るな……。